林浩一氏の「ITアーキテクトの視点」が今週、最終回を迎えた。同連載は、ITアーキテクトとして企業へのIT導入に取り組んできた林氏の経験を基に、「これからのIT業界はどうなるのか、その中で(ITエンジニアは)キャリアをどのように積んでいけばいいのか」をロジカルシンキング、プロジェクトの進捗遅れなど、ITエンジニアにとって関心の高い話題にからめて取り上げてきた。

 林氏は、これからのIT業界について「大手SI業者にお任せでシステム開発を進める」という従来の開発スタイルが限界に近づいていると見る。例えば「RFPによるコンペで失われた信頼関係」では、 提案依頼書(RFP)によって開発費用の相場は下がったが、その弊害として発注者と受注者との信頼関係が損なわれ、結果としてアジャイル開発の普及を阻害したとして、「その歴史的役割は終わったのではないだろうか」と主張する。「『次工程はお客様』を業界の合言葉に」では、下流工程の経験を積ませることなく上流工程(要件定義)の要員を育成しようという業界の流れに警鐘を鳴らす。

 ITエンジニアのキャリアについては「技術力だけで(キャリアを)進めることは難しい」として、技術力とともに営業力や企画力を身に付けることを推奨する。その具体例である「「忍者赤影」に学ぶ説明の極意 」は、往年の人気ドラマ「仮面の忍者赤影」のオープニングナレーションを引用しつつ、ユーザーを満足させる説明のポイントを解説したものだ。

 IT業界の明日と共に、自らのキャリアを考えるヒントとして、同連載を改めて振り返ってみてはどうだろうか。

林浩一のITアーキテクトの視点

「言い訳しやすさ」で人はより能動的になる
機能は自然と増える あらがえるのは技術者
大丈夫と言い切れるか?アーキテクトの試金石
ストレスを減らす呪文「後知恵バイアスかも」
ロジカルシンキングとは考え方にあらず
仕事の行動指針はITのメカニズムに学ぼう
コンピュータがどうしてもできないこと
「次工程はお客様」を業界の合言葉に
RFPによるコンペで失われた信頼関係
「忍者赤影」に学ぶ説明の極意
「ユーザーが決めた」は言い訳にならない
怒鳴る上役への備えは「ティラノの原理」で
Steve Jobs氏とファイルメニュー
「ユーザー」という用語が意識の中の境界線を作る
インフォームドコンセントシステム開発でも準備を
リファレンスモデルで開発の全体感を共有
日本の目指すべきITはボトムアップな全体最適
長年筆者を悩ませてきた“ビール在庫問題”
コンペ結果に納得できるリフレクティブな提案
自動生成ツールを見たら思い出してほしい
幸せになれる”「利用者主導の開発」
情報システムを価格にふさわしく見せる
ソフトウエア品質のパラドックス
ITエンジニアには、無限の可能性がある