第3回は日本発の動画サービスとして20代を中心に人気の高いドワンゴの「niconico」を取り上げる。現在、「ニコニコ動画」や「ニコニコ生放送」の視聴環境はパソコンから、スマートフォン/タブレット、ゲーム機、テレビへと拡大している。

 2011年10月から2012年9月にかけてニコニコ動画、ニコニコ生放送のスマートフォン/タブレット用アプリを担当し、UX/UIの改善を続けてきた同社 ニコニコ事業本部 第一企画開発部 第四セクションの下村大樹氏と、niconico事業のコンシューマーエレクトロニクス分野におけるサービスの企画開発を担当するキテラス(関連記事)で、テレビ版(ブラビア、ビエラ)、PlayStation Vita版やWii U版の開発に携わった同社 コンシューマーエレクトロニクス事業部 事業企画セクションの高橋大樹氏に、パソコン向け以外のniconicoのUX/UIについて聞いた。前編はスマートフォン/タブレットの話題を中心に取り上げる。

(聞き手は大谷 晃司=ITpro

パソコン向けとスマートフォン/タブレット向けの違いは。

キテラス コンシューマーエレクトロニクス事業部 事業企画セクションの高橋大樹氏(左)と、ドワンゴ ニコニコ事業本部 第一企画開発部 第四セクションの下村大樹氏(右)
キテラス コンシューマーエレクトロニクス事業部 事業企画セクションの高橋大樹氏(左)と、ドワンゴ ニコニコ事業本部 第一企画開発部 第四セクションの下村大樹氏(右)
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 もともと「niconico」はPC向けのサービス。スマートフォン/タブレットはタッチデバイスであり、マウスで操作するPCとはユーザーの使い方が大きく異なる。PC版の移植・焼き直しとは全く違うと考えている。以前提供していたiOSアプリは、「アプリがあった方がいいよね」という“乗り”のようなところから始まり、タッチデバイスのいいところを生かせていない状況だった。リリースから2年たった段階で立ち返ろうということで、2011年10月から2012年9月にかけてスマートフォン/タブレット向けアプリの開発にかかわった。そこで最初にどうしたか。まずユーザーの利用シーンから考えていった。

図●人の生活行動に重ねたニコニコ動画のiPhoneアプリ同時接続者数
図●人の生活行動に重ねたニコニコ動画のiPhoneアプリ同時接続者数
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ユーザーの利用シーンはどのように調べたのか。

 総務省統計局が出している人の生活行動をグラフ化したものに、ニコニコ動画のiPhoneアプリの接続者数の推移を重ねていった(図1)。このグラフから、いつニコニコ動画のiPhoneアプリが使われているのかが分かる。当初は通勤・通学といった移動時間に使われていると思っていた。

 だが、実際には移動時間にはあまり使われていないことが分かった。特に朝はほとんど使われていない。一段階利用頻度が上がるのが昼の時間帯だが、さらにその3倍近く使われているのは寝る前の時間。ここがピークタイムになっている。こうした結果をかんがみて、自分たちが実際にスマートフォンをどう扱っているのかを考えた。