2012年9月、米マイクロソフトの新サーバーOS「Windows Server 2012」の国内提供が始まった。10月末にはクライアントOSの新版「Windows 8」が一般向けにリリースされた。いずれも約3年ぶりのメジャーバージョンアップである。
これら新OSのネットワーク関連機能は「前バージョンから正統な進化を遂げた」(伊藤忠テクノソリューションズ ITエンジニアリング室 プラットフォーム技術部の杵島 正和氏)という印象を述べるシステムインテグレーターが多い。
モバイルと仮想化がポイント
Windowsのネットワーク関連機能が大きく進化したのは、Windows XPからWindows Vistaへバージョンアップしたときだった。OSのカーネルの代替わりに合わせてアーキテクチャーが大きく変わった。続くWindows 7とWindows Server 2008 R2、そして今回のWindows 8とWindows Server 2012は、Vista時代のネットワーク関連機能をベースにした改良版という位置付けだ(図1)。
インテグレーター各社に取材したところ、特に期待を集めているのはWindows Server 2012の仮想化ソフト「Hyper-V」の新版である。日本マイクロソフトも「サーバーの仮想化やネットワークの仮想化といった大規模なシステム向けの新機能だけではない。ネットワーク越しに拠点間のバックアップにも使える『Hyper-Vレプリカ』など、企業規模を問わず活用できる機能を盛り込んだ」(サーバープラットフォームビジネス本部 Windows Server製品部 エグゼクティブプロダクトマネージャーの岡本 剛和氏)と自信をのぞかせる。
一方、Windows 8のネットワーク関連機能では「モバイル」が売りだ。タブレット端末などモバイル機器での利用を強く意識した、アプリケーションがタイル状に並ぶ新しいユーザーインタフェースがその一つ。そのほか、外出先で効率的に無線LANや3Gネットワークを利用するための機能などが追加されている。
こうしたことからWindows Server 2012やWindows 8は、クラウド環境の構築や利用を想定してデザインされているといえそうだ。サーバー仮想化やネットワーク仮想化を活用して構築したデータセンター基盤に、端末がリモートで接続して場所を問わずにシステムを利用できる環境作りを目指しているようにみえる。
こう説明すると、クラウド環境構築の予定がないユーザーは「自分にはメリットのないOS?」と思うかもしれない。しかし、日本マイクロソフトの岡本氏が挙げたバックアップや社内LAN向けの管理機能などは、企業規模に関係なく役立ちそうだ。将来の導入計画を考えるうえでも、一通り見ておいて損はない。