判決後の会見に臨むケンコーコムの後藤玄利・代表取締役社長
判決後の会見に臨むケンコーコムの後藤玄利・代表取締役社長
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 医薬品のネット通販を巡る、長い争いに終止符が打たれた。最高裁判所は2013年1月11日、ケンコーコムとウェルネットが厚生労働省を相手に起こしていた訴訟で、国の上告を棄却する判決を言い渡した。この判決のわずか数時間後、ケンコーコムは2009年から停止していた一般用医薬品(大衆薬)のネット販売を再開した。

 ケンコーコムらが厚生労働省を相手取り、行政訴訟を起こしたのは2009年5月。厚生労働省が2009年6月1日に施行する「薬事法の一部を改正する法律」(改正薬事法)の省令によって一部の一般用医薬品のインターネット販売が規制されることが確実になったことを受けてのものだった。

 ネット販売が禁止されたのは、特にリスクが高い「第一類医薬品」と、リスクが比較的高い「第二類医薬品」。リスクが比較的低い「第三類医薬品」についてはネット販売も可能とした。リスクによる一般用医薬品のこれら分類も、改正薬事法で規定したものだ。

 ケンコーコムをはじめとするネット通販事業者は、省令案が明らかになった時点から猛反発した。ヤフーと楽天が共同で実施したネット上の署名活動には、2009年3月時点で累計100万件以上もの署名が集まるなど、一般ユーザーを含めて強い関心を呼び起こした。

 とはいえ、厚生労働省の「副作用による健康被害防止のため」という主張も一理あったとも言える。東京地方裁判所が下した一審判決では、ケンコーコムらの訴えを棄却する判断がなされたのだ。ネット販売では、対面販売で可能な購入者の顔色確認ができない点などを挙げてネット規制には合理性があると判断した。

 流れが変わったのは、東京高等裁判所による二審判決だ。東京高裁は、改正薬事法は大衆薬のネット販売を一律に禁じていないため、ネット販売を禁じた省令は「国民の権利を制限する規定であり違法」と判断したのだ。最高裁判所は、この二審判決を支持するとともに、対面かネットかの区別で一律に安全性を論じる根拠に乏しいことも指摘した。

 いずれにしても、最高裁の判決により一般用医薬品のネット通販を巡る争いは終結した。以上、簡単に経緯を振り返ったが、詳細については以下の記事をご覧いただきたい。

最高裁が上告棄却、ケンコーコムはすぐさま販売再開

流れが変わった東京高裁による二審判決

国の勝利に終わった東京地裁による一審判決

ついにケンコーコムなどが国を提訴

医薬品のネット販売規制案に反発するネット通販事業者