4回目の今回は、エンタープライズモバイルを導入/展開する時に直面する「モバイルを導入した後にリスク管理部門からの指摘があり中断した」「労務管理など検討すべきテーマ、巻き込まなければいけない関係者が多く意見がまとまらない」などの「組織」観点での課題の背景とその対応について触れる。
エンタープライズモバイルにかかわる多くの部門/ベンダー
今までのシステム構築において総務部門や人事部門と打ち合わせをした経験はおありだろうか?
これからの「モバイルありきのシステム構築」においてはそれが普通になる。
スマートフォンは電話なのかPCなのか、という議論はよく聞かれるが、スマートフォンを電話ととらえるならば総務部管轄となるが、(小さな)PCと捉えるならばIT部門の管轄となる。また、携帯電話キャリアの窓口がどの部門なのかでも異なり、何れにしてもモバイルを活用したシステム構築においては両部門による調整が多い。また、通勤中の業務モバイルデバイスの業務利用(職務遂行)による時間外の労務上の取り決めやガイドラインの策定、BYOD導入による個人端末上の個人情報の扱いの判断は人事部との調整が伴う。
このように、社内部門、事業部門や拠点、端末や回線などのキャリアなど、これまでエンタープライズシステムの構築においては見られなかった多くの関係者との調整が必要となる。
以下に代表的な関与先(部門/ベンダー)とその内容をあげる。
- 審査部などのリスク管理部門: SNSなどによる社内情報漏洩を防ぐためのガイドラインの策定
- 支社・支店、工場などのサテライトIT部門:それぞれでモバイルデバイスが導入/運用されているケースも多く、これら部門との役割見直し
- 3G/4G通信キャリア:毎月の料金プランの変更、定期的な最適見直し、Wi-Fi時のアクセスポイント、インターネット接続の条件
- モバイルアプリ開発ベンダー:新たな開発ベンダーの選定。開発方法論(要件定義やテスト、ドキュメント定義、ソース管理、バージョン管理)の策定
- デバイスの保守・キッティングベンダー:H/W故障対応や初期導入時のセットアップ・キッティングの委託
- 既存システムとの連携開発担当:バックオフィス、基幹系などシステム連携
- モバイルデバイス管理ベンダー:MDMやアプリ配信の基盤構築、運用
また、担当部門があいまいとなるテーマが多く、適切な部門/ベンダーに割り振る判断が必要となる。
例えば、以下のようなテーマが想定される。
- 費用対効果の算出をどのような範囲で実施し、誰が算出するか
- SNS利用のガイドラインを誰が策定するか
- 教育内容の検討やその実施を誰がするか
- 問合せ窓口を誰が担当するか