第3回となる今回は、エンタープライズモバイルを導入/展開する際に直面する「モバイルを前提としたシステム基盤がデザインできない」「モバイルのシステム基盤へのインパクトが見えない」などの、「システム」からの観点での課題とその背景、およびそれらに対する対応について解説する。

システム基盤に影響を与えるエンタープライズモバイル

 エンタープライズモバイルを導入することによるシステム基盤へのインパクトは多大かつ多様だ。モバイル導入を担当した方の多くは、以下のような課題に頭を悩ませた経験があるのではないだろうか?

  • マルチ環境(マルチデバイス、マルチOS、マルチキャリア、マルチスクリーン)への対応の幅の広がり
  • ネットワーク、デバイス、アプリケーション毎のセキュリティ対応
  • BYOD導入によるプライベートと仕事を切り分けるデバイス管理
  • IT部門の見えないところで個人端末を業務に利用するシャドーIT
  • デバイス管理のためのツール選択と導入、またその運用のシステム化
  • 端末リプレイスサイクルや導入サイクルの高速短サイクル化
  • 専用端末のモバイル・デバイスへの置き換えによる新旧デバイスを共存させるシステム基盤の二重管理
  • 24時間365日でのシステム利用
  • 3G/4G、Wi-Fi環境などのネットワーク環境の変化
  • 避けられない「モバイルを前提としたシステム基盤構築」

     これからの基幹システムの再構築や、営業が利用する販売システム、営業支援システムなどの再構築や新規導入にあたっては、モバイルと合わせて(加えて)、あるいはモバイルからスタートすること(モバイルファースト)が求められる。

     システム基盤構築において、モバイルありきとなる理由とその背景は以下の3点に集約できる。

    図1●システム基盤がモバイルありきとなる背景
    図1●システム基盤がモバイルありきとなる背景
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    1. テクノロジーの進化と活用の流れ

     モバイルのテクノロジーの進化はコンシューマユースから始まっている。ユーザーは、高機能のモバイル・デバイスを所有し、高度なテクノロジーを安価に利用できる状況にある。既にPCと遜色ない高機能とPCを超える利便性を持ったデバイスが手元にある状況だ。

     メールなどのコミュニケーションツールだけでなく、インターネット、カメラ、動画、GPSを利用した位置情報確認なども日常的に利用している。そのようなモバイル・デバイスをビジネスでも利用し、より生産性高く業務を行いたいと望むことは当然である。

    2. ワークスタイルの変化の流れ

     機動性に優れたモバイルデバイスを持ち、いつでもどこでも好きなときに好きな場所で業務を実施するワークスタイルの選択が可能となってきている。

     そのためには、人事制度の整備や、様々な場所からオフィスへ接続するためのネットワーク環境の整備、セキュリティの整備などが必要となるが、そのような取組みも進んできている。

    3. 競争力のある企業経営の要求の流れ

     IT部門は、システム基盤に対して、効率化、競争力の強化などが企業経営から要求されている状況にある。

     モバイルデバイスを活用することで、今までシステム化されていない領域のシステム化の実現、従来とはまったく異なる新しい働き方による業務改革の実現、従来では実現できなかった業務効率や生産性の向上など、強い経営への貢献が可能となる。