スマートフォンやタブレットなどを利用してメールやスケジュールを確認するなど、モバイルデバイスを利用して生産性向上を図るビジネスパーソンは多い。元来コンシューマユースだったスマートデバイスを、ビジネスユースに活用しようという動きが広がり、多くの企業でエンタープライズ領域におけるスマートデバイスの導入が進んでいる。

 携帯電話、ノートパソコン、PDAでスタートしたビジネスにおけるモバイルデバイス活用は、2008年のiPhone発売を機にスマートデバイスに変わり、ビジネスに大きく影響を与えている。そして、モバイルデバイスを活用した新たな仕事の仕方が生まれ、それが当たり前になったのが2012年だった。

 利用シーンにおいてもメールやWebサイトを見るという利用から、商談サポート、接客支援、フィールドサービスなどのエンタープライズ領域の活用へ本格化してきている。その動きはさらに加速しており、2013年は非常に多くの企業で導入が進むことは間違いなく、まさにエンタープライズ・システムがモバイルを前提、あるいはモバイルからスタートする状況に移り変わる年となるであろう。

 これまでの基幹系システムやバックオフィス系システム(メール、グループウェア、ファイルサーバーなど)にモバイルが加わることで、新たに考えるべきこと、新たにやるべきことが確実に増える。そのようなモバイルを前提とした場合、IT部門がやるべきことと担うべき役割はどのように変わるのか。本連載で解説していく。

 今週は第1シーズン「戦略編」として、エンタープライズモバイルの現状と課題およびIT部門の役割、他部門との連携のあり方、モバイルファーストを前提としたシステム基盤および業務プロセス再構築の方針、今後のIT部門のあるべき姿について解説する。続いて来月に第2シーズン「実務編」を掲載、システム基盤と業務プロセスの再構築、およびIT部門変革の具体的な手順を説明する。

エンタープライズモバイルの活用状況

 現在、ビジネスでの主な活用用途は、スマートフォンの場合は機動性に優れ、直ぐに起動できることから、メール、スケジュール管理、報告などの業務、タブレットの場合はスマートフォンの特性に加え画面サイズが大きいことから、顧客向けプレゼンテーション業務が多い状況である。

図1●エンタープライズモバイルの活用状況
図1●エンタープライズモバイルの活用状況
[画像のクリックで拡大表示]

 活用例としても、モバイルデバイスを単にPCの代替として使用するのではなく、そのデバイスの特性を最大限に利用している。

図2●モバイル・デバイスの特性を生かした活用例(各社HPなどのデータを基にアビームコンサルティングで作成)
図2●モバイルデバイスの特性を生かした活用例(各社HPなどのデータを基にアビームコンサルティングで作成)
[画像のクリックで拡大表示]

 従来の携帯電話やノートPCなどの業務活用とは何が異なるのか。携帯電話は、機動性に優れているが音声やメールでのコミュニケーション側面での業務活用に限定され、ノートPCは業務活用の幅は広いが、その利用に対して時間と場所が制限されることが多い。

 しかし、スマートデバイスを中心としたモバイルデバイスは、機動性に優れ、業務活用の幅も広く、利用に対する時間と場所の制限を受けない特性を持ち、新たな活用の姿への広がりを見せている。

 また、エンタープライズモバイル導入/展開の中心部門は、IT部門とは限らない。元々コンシューマーユースのデバイス活用が進展したということもあり、営業部門や現場が中心となり導入/展開している例も多く見られる。