日立システムズは顧客の海外進出需要の増加を受け、東南アジア進出支援サービスやタイのデータセンター(DC)を使った業務ソフト提供のクラウドサービスを開始している。タイでの事業展開を統括するため、日立システムズから日立アジア タイランドに出向している國安昭夫ゼネラルマネジャーに現在の状況や今後の計画を聞いた。

(聞き手は宗像 誠之=日経コンピュータ


日立システムズはタイのDCを使い、クラウドサービスを始めている。

日立アジア タイランドの國安昭夫ゼネラルマネジャー
日立アジア タイランドの國安昭夫ゼネラルマネジャー

 2010年夏から、タイでのクラウドサービスの第一弾を開始した。メールやWebサーバーの機能提供に加え、メモリーなどのコンピュータリソースをネット経由で提供するIaaS(インフラストラクチャ・アズ・ア・サービス)を展開している。2012年夏にサービス拡充し、クラウドに会計業務アプリを加えた。

 DCは設備を借りてサービス提供している。DCサービスやクラウドの顧客は2012年秋時点で30社程度。主に日系企業が顧客の中心だ。今後はクラウドが事業の中核になる。ハウジングの顧客も「システム資産は自社所有せず借りたい」という要望が多く、中長期でのクラウドへの移行を検討している。

タイは、日系の製造業が多数進出している。

写真●日立システムズがタイで販売を始めた、小型のコンテナ型DC
写真●日立システムズがタイで販売を始めた、小型のコンテナ型DC
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 そうした状況から、生産拠点で使えるサービス提供を急いでいる。クラウドで会計ソフトを提供したのはそのためだ。

 タイには日系企業が約7000社進出しており、このうち6割が生産拠点とされている。これら拠点では、日本の本社へ会計情報を報告する必要がある。こうした作業を現地の生産拠点の人員でも、簡単に低コストでできるサービスに需要があると考えた。

 そこで、英語やタイ語、日本語に対応した操作が容易な会計ソフトをタイのクラウド基盤で提供することにした。2012年秋時点では2~3社の利用実績がある。2014年度末には80社の顧客獲得を目標にしている。

 このほか、工場内に設置できる小型のコンテナ型DCも販売を始めた(写真)。

クラウドでは通信環境が重要になるが、タイの通信サービスの状況は?

 アクセス回線のコストは高めで、ビット単価あたりのコストパフォーマンスは日本より悪い。日本では一般的になっている光ファイバーによる高速インターネット通信も、タイではまだあまり普及していない。ただ、政府も通信環境の強化の必要性は認識しているため、今後は急速に改善されることが見込まれる。