2番目の難敵は、発注元や上司といった優位な立場を利用する相手である。下請けイジメやパワーハラスメントなどが社会問題となり、法律や社内規則に違反した圧力をかける要求は減ってきているかもしれない。しかし、それに近い無茶な要求は、今もITの現場にはびこっている。

 「別システムで実装する予定の相殺処理を、やっぱりERP側に実装してくれ」。詳細設計の真っただなか、さくら情報システムの柳原 寛氏(開発本部ERPソリューション部 ERPソリューション第1グループ グループ長)のもとにこんな要求が飛び込んできた。パートナーとしてプロジェクトに参加していた柳原氏らのチームにとって元請けとなるITベンダーC社からだった。

 相殺処理機能を実装するとなると、ERP側のデータベースなどアーキテクチャーの大幅な見直しを迫られる。柳原氏は何とか断ろうとしたが、相手は元請けという立場を利用して強行な姿勢を崩さない。そこで柳原氏は一計を案じ、C社に発注している、ユーザー企業のシステム子会社に直談判することにした。ところが柳原氏が説明に行くと、そのシステム子会社でも優位な立場から機能追加を強要された。それでも柳原氏は諦めなかった。ユーザー企業の経理部長に相談したのだ。

 「この機能追加は、大幅なコスト超過とスケジュール遅延を招きます。当初の予定通りにしたほうが御社のためです」。柳原氏がそういうと「そういう状況は聞いてなかった。それなら元のままで構わない」とあっさり折れた。すると間もなく、元請けのC社は要求を取り下げてきた。

[画像のクリックで拡大表示]