最初の難敵は、ワナワナする相手である。怒りを抑えきれずに興奮する、こちらの意見に耳を貸さず一方的に要求してくる―。そんな状態の相手にどう対処すればいいのか。

 ユー・エス・イーの天池泰仁氏(クラウドサービス事業部 Salesforceコンサルティングユニット ユニット長)は過去に何度か、ワナワナした相手に対処し、円満に断った経験を持つ。

 その一つが、ユーザー企業B社から米Salesforce.comのクラウドサービスを使った開発案件を受けたときのことだ。B社の担当者が突然、「画面を青から赤に変えてほしい」という無茶な要求を突きつけてきた。ユーザー企業のコーポレートカラーである赤に画面の色を統一したいとのことだった。

 天池氏が、標準仕様の青から色を変えるのは簡単ではないことを伝えると、その担当者はとたんにワナワナし始めた。何とか赤に変えることのデメリットを理解してもらおうとしたが、もう相手は興奮気味で全く聞く耳を持たない。

 そのとき天池氏が取った行動は、まずは傾聴することだった。「相手の意見をじっくり聞き、決して反論しないようにした。そうするうちに、相手は多少落ち着きを取り戻してくれた」(天池氏)。

 ただし、天池氏はその場で断ろうとはしなかった。あえて、時間を置くことにした。後日、改めて検討結果を説明することを伝え、B社をあとにした。「相手は、こちらの意見を聞く準備が全くできていなかった。こんなときは、いったん時間を置くことが最も効果的だと考えた」と天池氏は話す。

 日を改めて天池氏はB社を訪れ、画面の色を赤にした場合のメリットとデメリットを整理して伝えた。するとその担当者は落ち着いた様子で、「こんなにコストが必要なら諦める」と、当初の要求をあっさり取り下げた。

 天池氏はこの日、青いネクタイを締め、色の効果によって相手の気持ちを少しでも落ち着かせる対策も講じていたという。

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