1月9日、ビジネス向けSNS「LinkedIn」のユーザー数が2億人を突破したと発表された。振り返ってみると、LinkedInユーザーが1億人を突破したのが2011年3月のこと。それから約2年弱で倍増していることになる。2003年5月にサービスを開始し、1億ユーザーに到達するまでに約8年弱の期間を要していることを考えると、ここ1~2年におけるLinkedInのユーザー数が、加速度的に伸張していることがわかるだろう。

 実際、最も多くユーザーのいるアメリカ(約7400万人)では非常に盛んに活用されている様子を筆者自身も感じる機会が多くなってきた。筆者は外資系企業を中心に転職を数多く重ねてきていることもあり、LinkedInのお世話になることも多々ある。その経験上も、LinkedIn内におけるコミュニティ数の増加ぶり、そして、そのメンバーの増加ぶりが、最近顕著になってきているようだ。また、LinkedIn内でのユーザー間のやり取りなども目に見えて増えてきている。

“自己防衛”活動として長期的な関係を築く動き

 また、LinkedInの活用方法も、以前と比べて変化しつつあるようだ。これまでは転職などを考え始めているビジネスパーソンに対し、転職エージェント、あるいはヘッドハンターなどがコンタクトし、そこから具体的な転職案件につなげていく、文字通り短期のマッチング的な活用のされ方が多かった。

 だが最近では、それに加えて企業のリクルーターと(必ずしもすぐに転職を考えているとは限らず)将来的に転職をする可能性があるであろうビジネスパーソンが、お互いに今後のことを考えながら、長期的な関係を構築していく活用も増えてきている。現在はまだ外資系企業が中心だが、日本国内でもこのような活用が少なからず増えてきているようだ。

 とはいえ、日本国内におけるLinkedInの活用は、まだそれほど活発ではない印象である。LinkedInそのものは2011年10月に日本語対応となり、その影響もあって国内でもユーザー数は増えてきている状況にある。その一方、特に企業側での活用があまり聞かれないのが現状だ。最近になり日本国内にもLinkedIn以外のビジネス向けSNSが複数立ち上がってはいるが、いずれも同様の傾向にあるとみられる。

 この状況は以前から変わらず、それゆえに「日本ではなかなかビジネス向けSNSが成功しない」と言われている。その背景はいくつか考えられるが、まず日本は特にビジネス面でのコネクションとプライベート面でのコネクションを切り分けて考えるユーザーがそれほど多くなく、すべてのネットワーキングをFacebookで構築してしまうという点がある。日本では、一度名刺交換をしただけの関係であっても、積極的にFacebookでつながるケースが多く見られるが、アメリカではむしろそうした行為は奇異なものと見られることが多い。

 また、日本は依然として(以前とは状況が変わったとはいえ)アメリカに比べて相対的に雇用が安定しているという環境もある。そのため、ビジネスパーソンがそもそもLinkedInなどのSNSを活用して、いつでも転職できる機会を模索しているといった“自己防衛”活動をなかなか実行しいないということもあるだろう。そもそも転職をするということに対して、ポジティブに前向きに考えているユーザーが比較的多くはないのだ。

日本でも人材発掘の場として活用が広がりつつある

 とはいえ、この状況も少しずつ変化しており、ここ1年ほどはこうした“自己防衛”を準備し始めているユーザーも増え始めている。それに伴って、前述の通り、転職エージェント、あるいはヘッドハンターなどに限らず、企業の採用担当が候補者を探すケースも増えてきている。実際に筆者も複数社の採用担当から直接コンタクトを受けており、お互いの情報交換の場として積極的に活用している。

 おそらく今年以降、こういった流れは徐々に大きなものとなっていくだろう。企業がソーシャルメディアをはじめとしたデジタルマーケティングに本格的に踏み込んでいく際に、LinkedInは適した人材を登用するのに有効な場になってくるに違いない。

熊村 剛輔(くまむら ごうすけ)
デジタル ストラテジスト
熊村 剛輔(くまむら ごうすけ)1974年生まれ。プロミュージシャンからエンジニア、プロダクトマネージャー、オンライン媒体編集長などを経て、マイクロソフトに入社。企業サイト運営とソーシャルメディアマーケティング戦略をリードする。その後広報代理店のリードデジタルストラテジストおよびアパレルブランドにおいて日本・韓国のデジタルマーケティングを統括。現在に至る。