ビッグデータ、とりわけB to C(企業対個人)の分野では、データ収集と活用に関わる法的な処理を誤ると、消費者の反発や、ブランド毀損といった大きな失敗につながるリスクがある。しかも、データ収集・利用の領域が国内だけでなく海外にまたがるケースも考えられるうえに、従来は厳密には個人情報とみなされていなかった情報もメールアドレスなどで複数を紐付けしていくと事実上個人が特定可能になることが想定されるなど、問題は複雑化している。

 そこで、ビッグデータの法的処理についてどのような問題点が検討されているのかを、野村総合研究所情報技術本部イノベーション開発部上級研究員の城田真琴氏(写真1)が、国立情報学研究所客員教授で弁護士の岡村久道氏(写真2)に聞いていく。(ITpro編集部)

写真1●城田真琴氏
写真1●城田真琴氏

城田 よろしくお願いします。岡村先生は、総務省でビッグデータについて検討作業を行ってこられたと聞いています。

岡村 はい。総務省の情報通信審議会の関係で「ビッグデータの活用に関するアドホックグループ」というのが設置されました。それに構成員として参画しました。このアドホックグループの「取りまとめ」が2012年5月17日に公表されています。

城田 そのアドホックグループというのは、どういうものだったのでしょうか。

岡村 情報通信審議会の情報通信政策部会で新事業創出戦略委員会が設置されています。私はこの委員会の構成員として平成23年(2011年)2月から、「知識情報社会の実現に向けた情報通信政策の在り方」について検討作業をしてきました。ちょっと複雑なのですが、その下にICT利活用戦略ワーキンググループが置かれて、研究開発戦略委員会との合同ワーキンググループとして基本戦略ボードが設置され、さらにその下に、先ほどの「ビッグデータの活用に関するアドホックグループ」ができました。それらすべてに関わってきたというわけです。

城田 検討する場が何段にも分かれているのですね。中央省庁でビッグデータを検討したのは、それが最初になるのでしょうか。

岡村 私が知る限りでは、おそらくそうだと思います。

城田 先ほどおっしゃった「取りまとめ」は、総務省サイトでも見ることができますか。

写真2●岡村久道氏
写真2●岡村久道氏

岡村 総務省サイトの「情報通信審議会」の「会議資料」の箇所にある「新事業創出戦略委員会」のウェブページにアップロードされています。同サイトの「参考」には、「今後成長が期待されるICTサービス・システムとして検討されている、ビッグデータ(ICTの進展により生成・収集・蓄積等が可能・容易になる多種多量のデータ)の活用について、より専門的な観点から課題の抽出等を行い、ボードに報告することを目的とする。」と本活動について表記されています。