アラブ首長国連邦(UAE)のドバイに赴任して3年が過ぎた。当初は、2009年の「ドバイショック」でかつての勢いも衰えたかのような印象を受けたが、依然として元気である。ビル建設や道路拡張、鉄道路線延長をはじめとした各種公共工事がいまだに盛んで、最近は街のにぎわいも戻ってきた。不動産価格も回復し、凍結されていた住宅エリアの開発も再開された。「アラブの春」から波及した昨今の中近東における不安定な情勢が、UAEの経済活性化を後押ししているように感じる。

回線故障や機器調達で苦労多い

活気が戻ったドバイ、光ファイバー化もほぼ完了したが…

 UAEの通信事情は拡充が進んでおり、特にインターネット接続回線の料金は3年前に比べて3~5割程度下がった。通信回線の光ファイバー化もほぼ完了しており、アクセス回線設備の面では大変良好である。だが、現地通信事業者の運用体制に課題を残している。現地に進出している日系企業からは、「故障を報告しても担当者がすぐに来ない」「担当者がいつ来るか約束してくれない」「担当者が突然来たと思ったら勝手に帰る」といった不満の声が多く出ている。

 ユーザー企業にとっては外資の参入による競争促進で品質の向上を期待したいところだが、UAEの通信省は通信事業の免許を2015年まで海外事業者に開放しない方針を打ち出している。当面はこの状況に振り回されることになりそうだ。

 IT機器の調達にも大変苦労する。中東には在庫を持たない商習慣があり、機器ベンダーに正式注文して前払いしてからでないと調達してくれない。納期も約束しないため、注文した機器を自分の目で確認するまでは安心できない状況だ。このため、いかにして顧客の希望納期に間に合わせるか、納期に間に合わなかった場合はどう対処するか、で頭を悩ませることになる。

 ただ、こうした課題をうまく解決していくことが我々の役目である。それには現地での経験をはじめ、通信事業者や機器ベンダーとの良好な関係作りがものをいう。当社では2006年12月にドバイに駐在事務所を設置、2011年2月からはNTTヨーロッパの支店として事業体制を強化してきた。顧客に代わってスケジュールの進ちょくを管理し、機器の調達から入荷後の構築・設定までをまとめて手掛けることで、日本品質に近いサービスとサポートを実現できていると自負している。機器の調達状況も逐次確認し、臨機応変にプロジェクトを進められるようになってきた。

 最近はUAEに限らず、中東やアフリカ諸国でも導入実績が増えている。これらの地域には日系に限らず多くの多国籍企業が進出を図っており、今後の経済成長も見込めそうだ。

井上 晃(いのうえ ひかる)
NTTヨーロッパ ドバイ支店 営業部長。現地では日系企業に限らず、様々な企業にネットワークとITソリューションの営業活動を展開している。趣味は旅行と写真撮影で、全ての世界遺産を巡ることが生涯の目標。