筑波大学情報科学類は2012年11月21日、情報科学シンポジウム「国際化する日本発プログラミング言語Ruby」を開催した。同学類の卒業生であるRubyの作者まつもとゆきひろ氏や、恩師でRubyの国際標準化委員長を務めた筑波大学名誉教授 中田育男氏らが登壇した。

写真●情報科学シンポジウム「国際化する日本発プログラミング言語Ruby」
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より多くの分野にRubyを届けたい

 まつもとゆきひろ氏は「国際化するRubyの原点と将来」と題して講演した。Rubyは2012年4月にISO/IEC(国際標準化機構/国際電気標準会議)の標準規格として承認された(関連記事)。TIOBE Softwareが2012年8月に発表した検索数によるプログラミング言語の世界ランキングでは10位と、JavaScriptをしのぐ国際的な人気を得ている。まつもと氏は米Newsweek誌が選ぶ「ネットの王者100人」(日本語版目次)に、Facebook CEO Marc Zackerbarg氏らと並んで選出された。

写真●まつもとゆきひろ氏
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 まつもと氏は、初めてプログラムを書いたポケコンから、その原点を振り返った。大きなマイルストーンの一つが、筑波大学 情報学類(現情報科学類)プログラミング言語研究室で、中田育男氏を指導教官とした卒業論文で開発した最初のプログラミング言語だ。その言語はコンパイラであり多重継承を許すなど「Rubyと真逆だった」(まつもと氏)だったが、まつもと氏にとって「プログラミング言語を自分で作ることができる、やればできる」という自信を得た重要な経験になった。

 その後、まつもと氏は就職し、「バブル崩壊後の仕事が暇な時期に」(まつもと氏)、2つめの1プログラミング言語を開発し公開した。それがRubyである。PerlやLisp、Pascal、Smalltalkなど、まつもと氏が学んできた数多のプログラミング言語のエッセンスがRubyにはこめられている。

 その後Rubyは英語で書籍が出版され、世界に普及。アプリケーションフレームワークRuby on Railsの登場により、Webアプリケーションを高速に開発できる言語として広まった(スペシャルインタビュー - 世界がRubyを愛する理由)。

 まつもと氏はRubの今後について「科学技術計算や、組み込みなど、より多くの分野にRubyを届けたい」と語る。まつもと氏が理事長を務めるRubyアソシエーションではRuby Science Foundationによる科学技術ライブラリの開発を助成している(関連記事)。また、まつもと氏は組み込み向けのmrubyを開発している(関連記事)。

 まつもと氏は「Rubyが成功した理由の一つは20年間継続できたこと。『退官したので思う存分プログラミングができる』とおっしゃる恩師の中田先生のように、いつまでも続けていきたい」と語った。