日経ニューメディアは、通信と放送の二つの分野を扱っている週刊のニューズレターである。両分野ともに2013年は、さらに激動の1年になりそうだ。テーマがありすぎて個々に挙げていくときりがないが、本誌が特に注目している動きとして、主に「V-Low」と「FMC」、「ケーブルテレビ地上波再放送の対価問題」について紹介したい。

 放送の分野では、いわゆるV-Low帯をめぐり、1月から激しく動き出すと見られる。

 地上放送のデジタル化によって空いた周波数のうち、V-High帯の一部ではmmbiがNOTTVのサービスをスタートさせたが、V-Low帯は空いたままになっている。これまで想定されてきたシナリオは、この帯域を使ってISDB-Tsb方式によるマルチメディア放送を展開し、そこにラジオ放送がサイマルの形で相乗りするというものだった。

V-Low参入で民放ラジオ局はまとまるのか

 しかし、いまだその実用化の道筋はついていない。ハードウエアの整備に必要なコストを誰がどう負担するのか、という放送を始めるには避けて通れない大前提の課題がクリアできずにいるからだ。

 こうした中、日本民間放送連盟は、ハードウエアの整備に必要なコストを試算し、その結果を基に加盟各社を対象とした参入意向に関する調査を2012年11月下旬に締切日を設定して実施した。この集約が年明けにも民放連で行われたあと、様々なことが一気に動きだす見通しである。

 本誌は、日本民間放送連盟のラジオ委員会が2012年10月上旬に会員社向けてV-Lowマルチメディア放送に関する全社説明会を開催したあとのタイミングで、この日の会合に出席した総務省 情報流通行政局長の吉崎正弘氏に、V-Low帯へのスタンスなどについて聞いた。

 このときのインタビューの内容をかいつまんで説明すると、総務省側の基本的なスタンスは、「民放各局が体力を考えずにV-Lowマルチメディア放送に突っ込んでいって、(現行アナログ放送を含めて)全体が倒れてしまうようなことがあると、リスナーにとって最悪の事態であり、ワーストなシナリオである」「テレビ放送のときのように全員で手をつないでV-Low帯を使ってデジタルラジオに行くのかどうか、投資額の計算などをもとに早く結論を出してほしい」というものであった。

 今後の展開については、「それだけの体力があるという判断になり、みんながやりたいとなるのがベストのシナリオ」とする一方で、「ワーストなシナリオは絶対に避けるべき」「仮にみんなでやれないという場合は、各社がいつまでにどんなことを行いたいのか、意向を調査する必要があるだろう」と述べた。

 要するに、V-Lowマルチメディア放送への参入で民放がまとまらないのであれば、総務省がラジオ放送各社のニーズを聞いて、改めて仕切りなおすという意味合いだろう。V-Low帯は世界的にはFM放送で利用されており受信チップの出回っていることから、都市部におけるAM放送の難聴対策としてV-Low帯をFM放送に使うというシナリオも、以前から水面下ではささやかれている。従来シナリオも含めて様々な選択肢がありえそうだ。

 民放連は、アンケート調査の集約を1月上旬に予定している。新政権も発足したこともあり、この結果を受けて、一気に様々な動きが表面化してきそうだ。