あちらこちらで「SIビジネス」の先行きへの不安が語られている。現場のエンジニアはこの状況をどう捉えればいいのだろうか。いろいろな見方ができるだろう。2013年の初めに、このことを考えてみたい。『日経SYSTEMS』の見方は、「“卒SI”の発想で飛躍する時期が来た」である。

エンジニアに感じるのは「自信」と「閉塞感」

 まず、ITを一般の人の目線で見てみよう。「これからの社会の発展に大きく寄与するものは何か」と問えば、多くの人が「IT」と答えるはずだ。さまざまな未来予測の中にITは確実に組み込まれているし、新ビジネスではITがビジネスそのものになっていることは珍しくない。一般の人が思い描くITのイメージは、「これからますます伸びる」である。

 翻ってIT業界の中を見てみると、このイメージとのズレを強く感じる。元気な印象をあまり受けない。スマートフォンやタブレット端末は次々と発表され、新たなクラウドサービスやビッグデータといったキーワードは登場しているが、“熱気”を感じない。特に、企業システムのエンジニアが目立たない。

 スマートフォンやタブレット端末を業務に生かした新システムの話や、新しいクラウドサービスを企業内で活用した話、ビッグデータシステムと呼べるプロジェクトに取り組んだ話---。こうした話題はもちろんある。だが、もっとあってもいいという印象だ。

 それに、(これはいいことだが)システム構築プロジェクトに失敗した事例は、ひところに比べると少なくなっているように感じる。

 これらのことから感じるのは、企業システムに関わるエンジニアの「自信」と「閉塞感」だ。

 「自信」とは、システム構築プロジェクトを確実にゴールに到達させることができる自信だ。もちろん、プロジェクトの失敗がゼロになったというわけではない。だが、プロジェクトを「マネジメントする」という考え方は浸透し、この点で少なからず自信を持っているエンジニアはいるだろう。

 同時に「閉塞感」も抱いているように感じられる。スマートフォンやクラウド、ビッグデータの話題は耳に入るが、それらを活用したシステム構築案件が次々とスタートしている状況とはいえない。ユーザー企業のシステムに対する投資意欲は弱く、大型の新規開発プロジェクトはめっきり減っていると言わざるを得ない。こうしたことから「SIビジネス」の先行きへの不安が語られている。

 企業システムに関わるエンジニアはこう思っているのではないか。「プロジェクトさえ始まってくれれば成功させる自信はある。だが、プロジェクトが始まらないのでもどかしい」。