2013年のIT業界の動きを考える時、答えはシリコンバレーにあると感じている。

 今やビッグデータやクラウドという用語は聞かない日がないほど、日本の産業界でも定着している。これらの言葉はどこから来たかと言えば、米西海岸のハイテク集積地「シリコンバレー」から広まっている。

 筆者は2012年を通して、この欄を書くために準備したことが1つある。シリコンバレーなどに集まるハイテク企業が四半期ごとに決算を発表する際に、各社のCEOが証券アナリスト向けに電話会見をする。それを傍受して、経営者の本音やIT産業の動向などを探ることだ(各会見の状況はその都度、ITproのニュース欄で報告してきた)。

 そこから見えてきた2013年の動向を、映画のタイトルに模して言うならば「セックスと嘘とビッグデータ」と表現できる。

 先ずセックス(性別)というのは、経営者の新潮流の話。2012年は米著名ハイテク企業に女性経営者が誕生し、新たな局面を迎えた。米ヤフーのCEO(最高経営責任者)には、グーグル出身のマリッサ・メイヤー氏が、米IBMのCEOにはバージニア・ロメッティCEOがそれぞれ就任した。2011年に米HP(ヒューレット・パッカード)のCEOに就いたメグ・ホイットマン氏に続く動きだ。

 これは、スティーブ・ジョブス氏がこの世を去った後、新たな起業家精神を優秀な女性に求めていることを表す。CEOではないが、フェイスブックのCOO(最高執行責任者)やオラクルの社長も女性が就いている。背景には「優秀な女性経営者に、慣習にとらわれない新事業を創造してほしい」という進取の精神に富むシリコンバレー的な発想がある。

 ただ女性CEOに限らず、今のところ、明確な進路を示せていないというのが、決算会見を1年通して聞いてみた感想だ。

 証券アナリストらは、相手がフェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOでも、グーグルのラリー・ペイジCEOでも「新たな収益源」について次々と質問を浴びせていた。特に印象に残ったのは「パソコンからスマホやタブレットに端末の主流が移る中で、どう収益を高められるのか」。あるいは「顧客や購買動向などデータ分析でどのように収益を生み出せるのか」といった質問だ。

 HPやデル、あるいはインテル、マイクロソフトなどの各CEOは「ウィンドウズ8」の効果を力説するが、投資家は「それよりもスマホやタブレット、ビッグデータ対策は?」という点に関心を注ぐ。  

 これに焦ってしまった経営者の1人がHPのウイットマンCEOだろう。2011年8月に110億ドルで買収した英ソフトウエア会社のオートノミーをHPのビッグデータ戦略に組み込むとした。だが、結果として“嘘”が出てきた。