2013年、日経コミュニケーションが掲げる2大キーワードが「モバイル」と「クラウド」だ。それぞれの動向に加えて、モバイルからクラウドへと流れ込む膨大な多種多様なデータ、いわゆる「ビッグデータ」にも注目している。通信業界にとって新たなビジネスチャンスがあるからだ。

 最初に、ネットワークから見たクラウドを展望する。注目するキーワードは2012年に引き続き「SDN」(Software Defined Network/Networking)だ。まずは2012年の状況を振り返らせてほしい。

 昨今のクラウド、特にデータセンターでは、ネットワークは「悪者」扱いをされている。サーバーやストレージは仮想化が進み、データセンターの進化をけん引しているが、その足を引っ張っているのがネットワークだという指摘だ。データセンターでは、ネットワークの増強・変更が頻繁に起こる。その際、物理的なネットワーク機器の増設や設定変更に要する手間が、サーバーやストレージに比べると、桁違いに大変というのだ。

バズワードを脱するSDN

 こうした指摘に対し、ネットワーク業界が2012年に提案したのが「ネットワークの仮想化」だ。ネットワークの仮想化とは、物理的なネットワークの上に仮想的な論理ネットワークを構築し、このレイヤーでネットワークを設計・運用するという手法である。このネットワークの仮想化を実現するプロトコルとして「OpenFlow」が注目を浴び、SDNとともに、多くのベンダーがアピールするようになった。その熱狂度合いはすさまじく、「既にバズワード化している」という声が挙がるくらい、山ほどのアイデアと、多大な期待が寄せられた。

 夢物語的な話題も少なくない、2012年のトピックスで、2013年のトレンドにつながりそうなものは大きく2つある。一つは4月の米グーグルの発表。同社のデータセンター間ネットワークを100% SDNで運用していることが明らかになった。もう一つは7月、ネットワーク仮想化プラットフォームのパイオニア的な存在である米ニシラを、米ヴイエムウェアが10億ドル超で買収したことだ。

 グーグルの発表は、それまでデータセンター内が適用場所とみられていたSDNをWANの領域にまで広げたことがインパクトである。通信事業者の広域ネットワークなども含めて、適用場所の拡大は2013年のSDNの注目点だ。

 また、ヴイエムウェアのニシラ買収は、クラウド基盤ソフトとネットワーク仮想化プラットフォームの統合という形で2013年末ころに製品化される予定。上位となるクラウド基盤ソフトから下位となるネットワーク仮想化プラットフォームを介して、コンピュータリソースのみならず、ネットワークリソースも含めてトータルで管理する。いわゆるオーケストレーションの動きが加速することが2013年の注目点だ。