2012年12月7日17時18分、東日本大震災の余震とみられる、三陸沖が震源のマグニチュード7.3の地震が発生した。最大震度は5弱、津波警報も発令された。今回、災害時に必須となるITインフラが、スマートフォンの急増に対応しきれていないことが露呈。早期の対応が求められる。

 地震当日、代表的な情報サイトが軒並みつながりにくくなった()。アクセス負荷を分散するコンテンツ配信ネットワーク(CDN)事業者を利用していたほか、ヤフーやウェザーニューズはスマホ向けの軽量なサイトを用意していたにもかかわらず、だ。

図●2012年12月7日の三陸沖地震に伴って発生した情報サイトの問題
スマートフォンによる大量アクセスが原因でつながりにくい状況が多発した
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 地震直後は利用が急増。「特にスマホ専用サイトには、最大で通常の18倍と想定以上のアクセスがあった」(ヤフー)。国内のスマホ契約数は大震災当時の2011年3月末時点で約1000万台だったのが、2013年3月末には4倍の4000万台を超える見通しだ。

 各提供者は手をこまぬいていたわけではない。気象庁はトップページの画像を削除するなどで負荷を軽減。ウェザーニューズはCDNの契約帯域を手動で引き上げて能力を追加したが、両者ともアクセスをさばききれなかった。

 一方で大手SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のFacebookやTwitter、無料通話のLINEなど、もともとスマホの利用が多いコミュニケーションサービスでは支障がなかった。「ユーザー増に対応すべく、インフラを継続的に増強していた」(LINEを提供するNHN Japan)。

 地震と同日の12月7日、通信事業者でも別の問題が露呈した。KDDIが自社端末向けに配信した広告が、ソフトバンクモバイルのスマホ「iPhone5」に緊急メールとして表示されてしまったのだ。

 原因はソフトバンクのiPhone5が、「ETWS」と呼ぶ同報技術で配信するメッセージの属性を判別できなかったこと。仕様上、同じ周波数帯を使う他社の配信も受信できるため、属性IDを利用して警報かどうか、自社配信かどうかを判別する。ソフトバンクはこの仕組みを実装していなかった。

 同社は2013年春までに問題を解消するとしているが、スマホの進化に事業者の対応が後手に回っている構図が浮かび上がる。

 大手事業者で次々と露呈した“スマホ問題”。企業システムの構築・運用でも検証が必要だ。