富士通と三井物産は2012年12月12日、HEMS(家庭エネルギー管理システム)などを手掛ける共同出資会社「フューチャーシティソリューションズ」を設立した。

 節電意識の高まりを受け、パナソニックに代表される電機メーカーだけでなく、トヨタ自動車のような自動車メーカーなども相次ぎHEMS市場に参入している()。激化する競争を勝ち抜くために今回、ITベンダーと総合商社が手を組んだ格好だ。HEMSを通じて電力利用状況などの「ビッグデータ」を収集し、新たな住民サービスの創出を狙う。

表●国内の主なHEMS(家庭エネルギー管理システム)の特徴
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 新会社が目を付けたのは、新築住宅市場の約8割を占める中堅のホームビルダーだ。中堅事業者は大手ハウスメーカーとは異なり、HEMS機器を独自で開発・運用する余力に乏しい。「安価なHEMSを提供すれば、ニーズをつかめる」と三井物産出身の村田良一社長は話す。

 複数メーカーの家電機器や住宅設備と接続できる仕組みを整えて、導入のハードルを下げる。情報を一元管理して運用コストを抑える。こうした特徴を持つ「クラウド型HEMS」を開発し、2013年4月以降に販売を始める計画だ。富士通のデータセンターを利用する。政府は2012年11月に「グリーン政策大綱」の骨子を発表し、2030年までにHEMSを全世帯に普及させる目標を掲げた。「早期に1割のシェアを獲得したい」と村田社長は言う。

 富士通が狙うのは、HEMSが生み出すビッグデータだ。これを基に、医療や福祉などで新たなビジネスを創出できるとみる。

 三井物産も「国内外でスマートコミュニティ事業を推進するうえで、ビッグデータ(分析機能)は不可欠になる」(新会社の村田社長)と判断した。富士通と共同でITを使った新たな住民サービスを生み出せれば「国の補助金を頼りにしない、新たなビジネスモデルが構築できる」(同)と考える。

 HEMSを「ビッグデータ発信源」と捉えるITベンダーは多い。NECは積水化学工業と提携し、2012年4月からの半年間で5000台のHEMSを出荷した。

 日本IBMは2012年10月、積水ハウスとの業務提携を発表。機器メーカーに依存せずにデータの一元管理ができるよう、プラットフォームの共通化に乗り出した。積水ハウスは3年間で3万戸にHEMSを導入する計画だ。