あるシステムのIDで別のシステムの認証を行う「認証連携」は、消費者向けサービスを展開する企業同士が連携して事業を展開する上で、強力な武器になる。

 「将来は、中小規模のEコマースサイトとの連携も考えている」。日本郵便 郵便事業総本部 法人営業部 新規サービス開発室の山田伸治室長は、現在構築中の認証基盤システムに、新規事業を創出するための基盤として期待を寄せる。

図1●日本郵便による利用者ID統合の概要
図1●日本郵便による利用者ID統合の概要
既存サービスの認証システムと認証連携することで、システム改修を最小限に抑える
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 日本郵便は2013年4月から、利用者のIDおよび認証基盤の統合に乗り出す(図1)。これまでサービスごとにバラバラに振り出していた利用者IDを「ゆうびんID(仮称)」に一本化。日本郵便のいずれかのサービスで一度氏名や住所を登録すれば、他のサービスにもそのまま適用できる。サービスごとに設置していた顧客窓口を統合することで、コスト削減にもつながる。

 NTTデータの認証連携ソフトウエア「Sinfonex」を使い、既存のシステムが振り出したIDと新IDをひも付ける。認証連携の標準規格であるSAMLを使い、新IDで認証すれば元のIDで認証したとみなす構成にした。

 まず2013年4月に、再配達のインターネット受付サービス、インターネット集荷、ラベル印字サービスに、一つのIDでログインできるようにする計画。同年7月には切手の通販、同年10月には年賀状の通販といった新サービスを、この統合IDで使えるようにする予定である。

 日本郵便は将来、このゆうびんIDを外部のEコマースサービスにも提供する考えだ。大量の個人情報を管理するリスクを避けたいEコマース事業者に対し、日本郵便が認証や顧客データベースの管理を代行。サービス利用者は、日本郵便のIDとパスワードでEコマースサイトにログインできる。日本郵便は、そのEコマースサイトで利用者が注文した商品の発送を請け負うことで収益を得る、という事業モデルだ。