プライスウォーターハウスクーパース 椎名 茂 代表取締役社長

 私たちは、日本経済の低迷期からの再生、そして新たなる持続的成長の方向性を探るための分析や研究を重ねてきた。その中であぶり出されたのは、今、私たちは次の四つの「現実」を直視する必要があるということだ。(1)複雑化するビジネス環境、(2)イノベーションを生み出す環境の整備、(3)高齢化社会の到来、そして(4)アジア・新興国市場の台頭、である。

 特に、すさまじいスピードで成長する新興国市場への対応は最重要課題と言えよう。この激動の市場で勝ち抜くためには、企業は将来のビジョンを明確に定め、グローバルでの業務プロセスやITの整備、優秀な人材獲得によるビジネス基盤の整備を行い、競争力の高い製品の研究、開発、そして機動的な販売戦略が重要となる。しかもこれは一国だけで完結するのではなく、複数の国にまたがるビジネスモデル戦略を検討しなければならない。まさに「クロスボーダー」の時代である。

 新興国市場に対応するために、当社は2012年秋に「新興国戦略展開支援室」を設置した。インド、ブラジル、ロシア、東南アジア諸国などでの事業展開を加速させる日本企業に対し、戦略、サプライチェーン、人事領域におけるコンサルティングや、クロスボーダーM&Aなどのファイナンシャルアドバイザリーのサービスを提供し、各国のPwCメンバーファームと連携してプロジェクトを実施している。当社には世界158カ国18万人以上のプロフェッショナルを有するグローバルネットワークが存在する。2013年はこのネットワークをフル活用し、世界で活躍する日本企業や日本でビジネスを展開する外資系企業をクロスボーダーで支援していく。