富士通 山本 正已 代表取締役社長

 2012年は、欧州の債務危機をはじめとする金融不安や新興国経済の減速を受け、世界経済の先行き不透明感が強まった。また、国家間の緊張の高まりが経済活動にも影響を及ぼすなど、新たなリスクが顕在化し、経営にとっては難しい舵取りが求められる厳しい1年だった。

 そのような中、独立行政法人理化学研究所と共同で開発したスーパーコンピュータ「京」の共用が昨年9月末に開始された。従来では困難とされてきた複雑な事象の解析や、研究開発期間の大幅な短縮が可能となり、今後、様々な分野での成果創出が期待されている。これを突破口として、社会が抱える課題の解決あるいはイノベーションの牽引役となっていこうという思いを強くした年だった。

 2013年は、富士通グループとしてクラウドビジネスの領域をさらに拡大していく。日本、オーストラリア、シンガポール、米国、英国、ドイツを中心にグローバルに均一なパブリック型クラウドサービスの提供をさらに進める。クラウドは多様な領域でICTの先進的な利活用を可能にする。農業分野向け食・農クラウド「Akisa(i 秋彩)」を昨年10月に提供開始したが、今後も様々な業界のニーズに合ったサービスを展開していく。

 また、企業内に存在する多様なデータやソーシャルメディア、各種センサーから得られる大量な情報の分析を、企業の経営判断や社会の様々なニーズの発掘などに役立てるため、高速処理技術や各種サービスをさらに充実させる。富士通グループは、こうした先進の技術やソリュションで、顧客の競争力の強化や新たなビジネスの創出に貢献したい。