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 2012年は、日本における電子書籍の普及を考える上で重要な出来事がいくつも起こった記念すべき年だった。国内外の企業から日本市場向けの電子書籍端末が次々と発売され、日本のユーザーが日本語の電子書籍を日本語で購入できる電子書籍マーケットがいくつもオープンした。「日本の電子書籍元年だった」と言っても決して大げさな表現ではないだろう。

 ITproでも2012年中に数多くの電子書籍関連記事を紹介してきたが(ざっと数えたところ40本以上あった)、それらのうちで特にITpro読者からの反響が大きかったのは、10月下旬に米アマゾンの電子書籍端末「Kindle」の最新機種が日本に上陸することを伝えた「アマゾンが日本向けKindle最新4モデルを予約開始、「無料3G通信付きで1万2980円」の衝撃」というニュース記事である。

 いったい何が“衝撃”だったのかというと、発表された国内向け4モデルのうちの一つ、6型Eインク電子ペーパーディスプレイを採用した「Kindle Paperwhite Wi-Fi + 3G」というモデルが、端末代金(1万2980円)さえ支払えば、電子書籍のダウンロードのために3G通信(NTTドコモの回線)を以後ずっと無料で利用できるというものだったのだ。「日本で3G通信を完全無料にするなんてまず無理だろう」という大勢の見方を、“黒船”であるKindleはあっさりと打ち破ってしまった。

 「通信費用を気にせず、いつでもどこでも電子書籍をすぐダウンロードして読める」ことが、電子書籍が本格的に普及する上で望ましい条件であるのは間違いない。これを国内でいち早く実現したという意味で、無料3G通信付きKindleの発売が日本の電子書籍分野における2012年最大のニュースであると筆者は考える。

端末は出そろった、勝負の舞台は「電子書籍ストア」へ

 事実、上記ニュース記事はITproの記事アクセスランキングで上位を1週間以上もキープするほど連日数多くのアクセスを集めていた(いわゆる解説系ではない単体のニュース記事がこれほど読まれることは滅多にない)。日本でもいかに多くの人が「無料通信付き電子書籍端末」の登場を待ち望んでいたかがよく分かる。

 無料3G通信付きKindleの後を追うように11月上旬、国内企業からも無料通信付きの電子書籍端末が発表された。凸版印刷グループの電子書籍ストア運営会社BookLiveの「BookLive!Reader Lideo(リディオ)」である(「無料WiMAX通信付きで8480円」の電子書籍端末Lideoを12月発売、凸版グループ」)。

 Lideoは無料のWiMAX通信サービス(UQ WiMAXの回線を利用)を搭載していながら、3G通信付きKindleよりも4500円も安い「8480円」という価格設定だったため、これまた多くの人の度肝を抜いた。Kindleの3G通信無しモデルと比べるとわずか500円高いだけ。Lideoはフロントライトを備えていないといった仕様の違いはあるものの、「無料通信付きの端末を日本で売るなんて、世界規模でビジネスをしているアマゾンだからできる芸当」と思い込んでいた記者などは、ハンマーで頭を殴られたような衝撃を受けた。

 既に2社が無料通信付き端末を発売している以上、楽天の「kobo」やソニーの「Reader」などの競合製品もいつまでも静観してはいられないだろう。近いうちに「電子書籍端末は無料通信付きモデルを選べるのが当たり前」という状況が実現するのではないだろうか。さすがに2013年中の可能性は低そうだが、そう遠くない将来、「完全無料端末」さえ出てきても不思議ではない。