Windows 8の発売日である2012年10月26日、マイクロソフトのもう一つの新OS「Windows RT」も同時にリリースされた。Windows RTの最大の特徴は、スマートフォンやタブレットで広く採用されているARMプロセッサをターゲットとして開発されていることだ。つまり、ここ数年で爆発的にシェアを伸ばしPCの存在を脅かしつつあるスマートデバイスと同じ土俵に立ち、直接的に対抗するためのWindowsとしてマイクロソフトが投入した戦略製品である。
Windows RT対応端末は日本国内でもすでに発売され、店頭に並んで誰でも購入できる状態だ。しかし発売から2カ月が経過した現在、国内でWindows RTが大きく盛り上がる気配は感じられない。Windows 8が大きく注目を集める一方で、Windows RTの存在は果たしてこのまま埋もれたままなのだろうか。
今回はWindows RTに秘められた将来的な可能性について考察してみたい。
SurfaceをはじめとするWindows RT搭載端末が登場
Windows 8と異なり、Windows RTはパッケージやダウンロードによるOS単体での販売はない。そのため、既存のARMプロセッサ搭載タブレットに、Windows RTを単体で購入してインストールすることはできない。Windows RTを使いたい場合は、Windows RTをプリインストールした端末を購入することが前提となる。
Windows RT搭載機として最も有名な端末は、Microsoftの「Surface」だろう(写真1)。Surfaceの発表時には、Microsoftが初めて手がける自社ブランドのPCという点で、大きな注目を集めた(関連記事)。10月26日に発売された最初のSurfaceは「Surface RT」とも呼ばれる通り、OSとしてWindows RTを、プロセッサとしてNVIDIAのTegra 3を採用するARMタブレットだ。なお、2013年にはWindows 8とIntel製Coreプロセッサを採用した「Surface Pro」も投入される見込みである。
Surfaceは、残念ながら日本国内では未発売で入手することはできない。2012年末時点で日本国内において入手可能なWindows RT機は、NECとレノボが共同開発した「LaVie Y」(写真2)と、ASUSの「Vivo Tab RT」(写真3)の2機種である。
この2機種とも、CPUとしてARMプロセッサであるNVIDIAのTegra 3を搭載する。Windows RTが対応するARMプロセッサは、Tegra以外にもQualcommのSnapdragonシリーズや、Texas InstrumentsのOMAPシリーズがある。具体的なWindows RT端末は、Microsoft、ARMプロセッサベンダー、PCベンダーの3社が緊密な連携を取りながら開発を進めているといわれている。
また、Windows RTはタブレットに限定したOSではないものの、現時点で発表されている対応機種はタブレットやセパレート型がほとんどだ。唯一、LaVie YやそのベースとなったIdeaPad Yoga 11はノートPC型だが、タブレットに変形できるという点で、タブレットを強く意識した製品といえる。将来的にフォームファクタの増加は考えられるが、当面はタブレットが中心と考えていいだろう。