2012年、最も注目を集め、ユーザー数を伸ばし続けたスマートフォンアプリと言えば、NHN Japanのコミュニケーションツール「LINE」だろう。無料通話・無料チャットといった機能もさることながら、様々なキャラクターの「スタンプ」によるチャットや、公式アカウントを取得した企業によるマーケティング利用など、個人のコミュニケーション用途から、ビジネス展開まで幅広く話題を振りまいた。競合アプリも続々登場し、今やスマホアプリの定番にもなっている。

 では、なぜ無料通話・チャットで売り上げが立ち、事業が成り立つのだろうか。ビジネスパーソンにとって気になるのはこうした点だろう。「ビジネスパーソンのためのLINE入門」では、そもそもLINEがどのようなサービスで、どのようなビジネスモデルを描いているのかを解説している。

 LINEがこれだけ話題になったのは、とにかく短期間で多くのユーザーを集めたことが挙げられるだろう。LINEの登場は一昨年2011年の6月である。その約1年後には5000万を突破し、そのわずか数カ月後の11月末には全世界で8000万人、国内だけでも3600万人を獲得。国内では若年層のみならず、スマートフォンに移行した主婦層などもLINEを利用し始めているという。

 NHN Japanによると、その増加ペースは1週間で約200万人。本稿執筆時点では1億人突破のアナウンスはされていないものの、このペースで増え続ければ、この記事が公開されるタイミングで全世界1億人突破を達成しているかもしれない。

通信事業者の役割を奪う一方で提携も

 昨年11月末時点の国内3600万人という数字がいかにインパクトが大きいかは、携帯電話事業者の契約数と比較すれば一目瞭然だ。ソフトバンクモバイルの携帯電話契約数約3000万(2012年12月末時点)を優に超え、KDDI(au)の携帯電話契約数(同)に匹敵する数字である。

 もともと「通話」や「チャット」といった機能は、通信事業者が提供しているものだったが(チャットはSMSに該当)、スマートフォンの普及に併せて登場したLINEなどのアプリがその役割を通信事業者から奪うような構図になっている。

 LINEがコミュニケーションの“プラットフォーム”の役割を担うようになると、通信事業者は通信経路を提供するだけの“土管”になってしまう。通信事業者側から見ると、LINEはこの土管化を一層進める存在と写ってもおかしくはない。

 ただ一方でLINEを提供するNHN Japanは“安全・安心”を担保するには、厳格な契約に基づく契約者を抱える通信事業者との良好な関係は不可欠と判断、実際にKDDIと提携した。同社の森川 亮代表取締役社長はその提携範囲をさらに広げたい意向を述べている。2013年はこうした提携の進展にも注目が集まる。