ITproのselfupで掲載している書評コラム「新刊・近刊」の中で、今年2012年8月3日~12月24日に注目度が高かった20冊を紹介しよう。そこにIT業界のムードの変化を感じ取ることもできるし、移動時間などを有効活用する本を探すヒントもある。なお、同一の書籍に複数の書評記事があった場合は、ヒット数が多いほうの記事1本のみのヒット数を用いて順位付けした。

 1位となった『つながりすぎた世界』(ウィリアム・H・ダビドウ著、ダイヤモンド社 )は、ネットが普及した現代社会の姿をやや否定的な観点から論じた本。「世界がつながる」という状況は、「地球規模の情報のドミノ倒し」を引き起こすリスクを高める――というのが本書の主張だ。そういえば2012年は「ソーシャル疲れ」という言葉を見かける機会が多い一年でもあった。「つながり疲れ」とでもいうべき気分の読者に対して、こうした書籍は訴えかけてくる部分が多いのかもしれない。

 2位となった『組織の失敗学』は本サイト『危機管理の具体論』で1年半にわたり書き続けてきた樋口晴彦氏の著作。記者も本書については書評記事を書いたので、ここで改めて詳しい解説は控えるが、樋口氏はいったん当サイトでの連載を終了し、来年は当社の別サイトで新連載を始める検討を進めている。今後のご健筆をこの場を借りてお祈りさせていただきたい。

 3位となった『日本企業復活へのHTML5戦略』(小林雅一著、光文社)は、『アップル、グーグル、アマゾン 米IT列強支配を突き崩す』との副題が付いている。また今回は5位にも『アップル、グーグル、マイクロソフトはなぜ、イスラエル企業を欲しがるのか?』の書評がランク入りしている。実は2012年前半の書評記事ランキングを調べたときも『アップル、アマゾン、グーグルの競争戦略』(雨宮寛二著、NTT出版発行)という似た題名の書籍が入っていた。いわば“御三家研究本”がちょっとした定番になりつつある気配だ。

 以下、プロジェクト管理関連やビッグデータ関連、リーダーシップ関連、スマートフォン/タブレット関連の本が入っているのは、2012年前半のランキングと同様の傾向。

 その他で目についたのは、まず2012年10月の著作権法改正に合わせて発刊された4位の『違法ダウンロードで逮捕されないための改正著作権法』(鳥飼総合法律事務所著、朝日新聞出版)。また、コンピュータ科学の基礎に目を向けさせる6位『世界でもっとも強力な9のアルゴリズム』(ジョン・マコーミック著、日経BP社)と、ついつい定義を疎かにしがちな「戦略」の意味を掘り下げた20位『良い戦略、悪い戦略』(リチャード・P・ルメルト著、日本経済新聞出版社)も新傾向の切り口だ。せっかくの長い休みに、こういった基礎的な事項を掘り下げた本をのんびりと読むのも悪くない。

書評記事ベスト20

2012年8~12月書評記事ランキング
(2012年8月3日~12月24日)
1位つながりすぎた世界
2位組織の失敗学
3位日本企業復活へのHTML5戦略
4位違法ダウンロードで逮捕されないための改正著作権法
5位アップル、グーグル、マイクロソフトはなぜ、イスラエル企業を欲しがるのか?
6位世界でもっとも強力な9のアルゴリズム
7位リーダーにとって大切なことは、すべて課長時代に学べる
8位iPhone5で始まる!スマホ最終戦争
9位ビッグデータの衝撃
10位プロマネやってはいけない ヒューマンスキル編
11位リーダーの本当の仕事とは何か
12位なぜ、その「決断」はできたのか。
13位英国海兵隊に学ぶ最強組織のつくり方
14位最新PMBOKの基本と要点
15位プロの資料作成力
16位知識ゼロから学ぶソフトウェアプロジェクト管理
17位プログラマのためのサバイバルマニュアル
18位仮想化インフラを構築する技術
19位めんどうくさいWebセキュリティ
20位良い戦略、悪い戦略