今回の投稿でブランク氏は、企業運営において「経験こそがすべて」と言わんばかりに、下積みの重要性を説いています。グーグルやフェースブックのように学生が起業した会社が急成長するケースもありますが、途中から参加する多くのプロフェッショナルが支えているのが紛れもない事実です。(ITpro)

 サンクスギビング(感謝祭)のディナーを作るため、ジャガイモの皮むきなど「誰が何を分担するか」について家族が相談しているのを聞いて、ほとんどのキャリアが“ジャガイモの皮むき”から始まることを思い出しました。

キッチン・パトロール――食堂の料理準備作業

 軍隊の基本訓練中における象徴的な懲罰は、訓練インストラクターから、ルールを破ったペナルティーとして「キッチン・パトロール(食堂の料理準備作業)の役に就かせるぞ」と脅されることでした。キッチン・パトロールに就かされると、その基地にいる全兵隊の食事の準備のため、キッチンで一日中、ジャガイモの皮むきをしなければなりません。それはとても単調な作業ですが、驚いたことに訓練インストラクターが言っていたほど、私にとっては恐ろしい仕事ではありませんでした。

 しかし、私が兵士用大食堂で働いていたときに「1万人の兵士に対して、3食の食事をいかにして作るのか」という、以前は気にも留めなかったことを知ったのは、目から鱗が落ちるような体験でした。ジャガイモの皮むきは、毎日1万人の兵士に食事を食べさせるためにやらねばならない何千の作業のうちの、ほんの一つに過ぎませんでした。

 私のキャリアで最初に学んだことは、完成品を当たり前だと受け止めずに、その製品を完成するまでの複雑なシステムをありがたく思うことでした。

経験から学んだ解決策

 私が空軍基地で最初に従事した仕事は、タイの灼熱の太陽の下で、戦闘機にエレクトロニクス機器を搬入/搬出して、それらを冷房の効いた作業場で働いている技士のところに運ぶ作業でした。

 私たちが最も聞きたくなかったことは、技士が「この機器には問題が無い。問題は戦闘機の配線に違いない」という発言でした。それは、私たちが戦闘機に戻って、コネクタの曲がったピンや配線ケーブルのショート、あるいは故障したアンテナを見付けることを意味しました。

 さらにそれは、かまどのように熱い戦闘機の胴体の上や中をはいずり回る作業を意味しました。戦闘機の種類によっては、問題の個所を見付けるまで何時間も何日もかかることがありました(中でも、F-4型やF-105型、A-7型は最悪でした)。

 2~3カ月後、私は冷房の効いた作業場にいて、離着陸場にいる元同僚に「この機器は問題がない。問題は戦闘機の配線に違いない」と言う立場になっていました。私は、最近まで反対の立場にいたので、その言葉によってどのような作業が必要になるかよく分かっていました。

 このやり取りを2~3週間した後に、エレクトロニクス機器の修理マニュアルと、戦闘機のケーブルのピン配列の説明マニュアルとの間に、チグハグな部分があることに気付きました。それに加えて、戦闘機の破損されたケーブルを見付ける作業を簡素化する道具もありませんでした。

 この時点で、私はシステムの問題を少し理解していたので、戦闘機の配線ダイヤグラムを参照し、コネクタの故障箇所を容易に見付け出す擬似コネクタを考案するのに、さほど時間をかけなくてもよくなっていました。破損したケーブルを見つける作業自体は楽しいものではありませんでしたが、私が作った擬似コネクタを元同僚たちに譲ったので、明らかに短時間で済むようになりました。

 私のキャリアで次に学んだことは、私がもし悲惨で、熱く、士気をくじかせるような作業を離着陸場でやっていなければ、それが解決する価値のある問題だとは気が付かなかったことでしょう。