昨今では、「ステマ」という単語が一般的に使われるようになってきた。これまでは、ごく一部の業界関係者やインターネット、特にソーシャルメディアのヘビーユーザーを中心にした、いわば隠語のように使われてきたが、気が付けば新聞やテレビなどで、当たり前のように「ステマ」という表現を見かけるようになってきた。

 もちろん、この「ステマ」とは「ステルスマーケティング」の略、つまり「巧妙に隠された」マーケティング手法のことである。具体的には、広告であることを隠して企業が宣伝を行う行為を指す。

「口コミ」と「広告」の線引きは?

 思えば、2012年は「ステマに始まりステマに終わる一年」だったようにも思える。新年早々に「食べログやらせ問題」が語られ、そして年末である今月は「ペニオク(ペニーオークション)」の宣伝に一部の芸能人ブログが関与していた問題が起こっている。

 言ってみれば今年2012年は、特にデジタルマーケティングの業界においては、ソーシャルメディアを含むインターネット全般における「口コミ」と「広告」の線引きについて、改めて考えさせられる一年だった。

 議論は数多くなされているものの、これらの線引きをどうするか、といった具体的な部分には、まだまだ完全に落とし込めていないのが現状である。

 消費者庁では、2012年5月に、口コミサイトなどにおける、いわゆる「サクラ記事」などを、景表法(景品表示法)違反(不当表示の禁止)に該当する恐れがあるという旨を指摘してはいる。だが、そのための規制は特に設けられているというわけではない。

 また、インターネット上の口コミマーケティングを手掛けている事業者らによる任意団体「WOMマーケティング協議会(WOMJ)」でも、2010年3月に定めた口コミマーケティングの運用に関するガイドラインを、今年改定させている。だが、まだ発表されたばかりということもあり、広く浸透しているとはいえない。また、今回「消費者行動偽装の禁止」という原則を加えたガイドラインだが、そもそも業界の自主規制の目安という位置付けであり、法的拘束力はない。そのため、ガイドラインの影響力自体も、まだそれほど大きいとはいえないだろう。

 いずれにせよ、現在は「ステマ」そのものが、デジタルのみならずマーケティング活動において、口コミによって伝播される情報自体の信頼性や効果を大きく揺るがすようなことにもなりかねない状況になっている。その結果、あらゆる面で消費者が、(特にインターネット上で)有益な情報に接触する機会を奪われている事態につながる可能性が徐々に高まっている。

 もちろん、こうした状況に対し、いろいろな対策が実施されつつある。特にサイト運営者側の方面では、不適切な口コミの削除といった管理強化を始めている。やがて法的な整備も進んでくるかもしれない。