前回までは、既に割り当てが決まっている周波数帯による各社の戦略を見てきた。実はこれからも、いくつかの周波数帯の追加割り当てが予定されている。当然、これらの獲得の有無は事業者の競争に影響を及ぼす。

 まず近々に控えているのが1.7GHz帯の5MHz幅×2と(図1)、2.5GHz帯の30MH幅(図2)の追加割り当てだ。いずれも既に空き周波数帯であり、前者はLTE Band 3、後者はLTE TDD Band 41として国際的にも多く利用されている。1.7GHz帯については、総務省が利用調査を実施し、制度整備が動き出している。5MHz幅×2の追加割り当てのほか、NTTドコモに割り当てられている東名阪限定バンドのエリア拡張についても検討されている。イー・アクセスのほか、各社も獲得意向を示しており、争奪戦が予想される。

図1●1.7GHz帯の追加割り当てのポイント
図1●1.7GHz帯の追加割り当てのポイント
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図2●2.5GHz帯の追加割り当てのポイント
図2●2.5GHz帯の追加割り当てのポイント
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 割り当て時期だが、割り当ての手法としてオークション方式が検討されているにもかかわらず、臨時国会での法案成立の時期が見えず、「割り当て時期がどうなるかは、なんとも言えない」(総務省移動通信課の田原康生課長)状況だという。とはいえ、早くて2013年早々、遅くても2013年後半までには動きがありそうだ。

 2.5GHz帯の追加割り当ては、技術的条件が一部答申されている。UQコミュニケーションズがWiMAX2導入のため1社で30MHz幅の割り当てを希望しているほか、WCPも2社で分割しても構わないから割り当ててほしいという意向を示している。こちらもオークション方式による割り当てが第1候補で割り当て時期が見えない。さらに、「準天頂衛星がこの帯域を利用する可能性があり、共用条件の見直しも考えられる」(関係者)という情報があり、1.7GHz帯よりも割り当て時期が遅れる公算が高くなってきた。

 さらにその先の割り当てとしては、LTE-Advanced向けの帯域として3.4G~3.6GHz帯がある(図3)。合計で200MHz幅にもなるこの帯域をLTE-Advancedで利用できるようになると、ピーク速度300M~1Gビット/秒というサービスの姿が見えてくる。総務省では2012年4月に作業班を立ち上げ、2013年6月頃の報告書作成を目指している。2013年後半から2014年前半にも割り当て事業者が決定する可能性がある。

図3●本格的4G時代に向けて、3.4G~3.6GHz帯の割り当ても計画
図3●本格的4G時代に向けて、3.4G~3.6GHz帯の割り当ても計画
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 さらに大穴として、2GHz帯の移動衛星通信サービス(Mobile Satellite Service:MSS)用に確保された帯域を地上系移動通信サービスに転用しようという動きがある。韓国で検討が始まり、日本でも総務省に対してNTTドコモが問題提起した。その結果、2012年秋に改訂された周波数再編アクションプランには、「この周波数帯の利用の在り方について検討を実施する」と明記された。

 この周波数帯は日中韓、欧州でMSS用途に確保されているが、ほとんど利用実態はない。これが各国で携帯電話に転用されれば、突如として国際的なバンドが登場することになる。

 なおこの周波数帯に関して、ソフトバンクモバイルは災害対策用の衛星通信用とに割り当てを希望しており、NTTドコモと対立する姿勢を見せる。