理容室や美容室にある「もの」を思い浮かべて欲しい。薬剤・化粧品、ハサミやブラシ、ヘアピンまで、店舗内ではたくさんの消耗品や道具が使われている。これら、理美容サロンで扱う3万アイテムを全国の卸業者に大卸しているのが、大阪府東大阪市に本社を構える武田である。

 同種の大卸は全国で50社ほどだが、その先の理美容サロンは約32万軒。うち7割近くが一人で経営している小規模店舗だ。対サロン卸業者も小規模企業が多く存在しているため、パソコンを入れてオンライン取引を行うといったIT化はあまり進んでいない。

 ところが、最近は一部の企業でIT化の動きがあり、システムを連動できないかという要望が出るようになったという。

(写真左)代表取締役社長 駒田健治 氏 (写真右) 取締役 経理部長 坂下健 氏
(写真左)代表取締役社長 駒田健治 氏
(写真右) 取締役 経理部長 坂下健 氏

 さらに、「最近は皆、在庫を嫌うので発注が少量・多品種・多回数になってきた」と武田の駒田健治社長は説明する。これに対応するため、省力化して社内コストを抑える必要が出てきたのだ。

 一方、取締役経理部長の坂下健氏は「アイテムが3万もあると帳簿上の在庫と実在庫がずれることがありお客様にご迷惑をかけることもあった。さらに経理の立場では資料がすぐ手に入らず経営分析を迅速に行えない」との問題を感じていたという。

どのコンサルタントに聞けばよいのか?

 物流から見直しをしようと考えた同社は、物流系のコンサルタントに意見を求める。一定のアドバイスは受けられたものの、システム化に向けてITベンダー(システム会社)に提案を依頼すると、ベンダーは物流コンサルタントとは違う意見を言う。

 ――いったいだれのアドバイスを聞けばよいのか…。

 悩んだ同社が白羽の矢を立てたのがITコーディネータだった。「コンサルタントとベンダーの話が一致せず困っていたところ、UFJ銀行からITコーディネータの存在を紹介されたのです」と坂下氏は述懐する。早速、中小企業基盤整備機構(当時は中小企業総合事業団)のIT推進アドバイザー派遣制度に申し込み、ITコーディネータの川端一輝氏にベンダー選定のアドバイスを依頼することにした。

 依頼を受けた川端氏は、いきなりベンダー選定の助言するのではなく、選定基準の元となる「会社の経営課題」の整理を提案した。15名ほどの関係社員にも参加してもらい、(1)現状はどうなのか<である>を共有、そして(2)達成したい目標<べき>を共有。これを(3)行動プランである<する>に整理し、武田が求めるシステムをまとめた「システム提案要求書(RFP)」に結実させていった。

 この過程において、駒田社長は「ベテラン社員は商品台帳が頭に入っているくらい業務に精通しているがゆえに、システム導入には抵抗が起きやすい。私は『将来を考えて決めたことだ、疑うな』と宣言し、わだかまりが残らないようにした」と留意点を指摘する。

 今では年齢の高いベテラン社員もやる気をもって取り組んでいるそうだ。