世界で愛されるプログラミング言語Rubyの作者まつもとゆきひろ氏。その開発メンバーも約半数は海外。仕事として開発できたから今のRubyがあると、まつもと氏は言う。そして、Rubyを自分の技術力やツールを発信するための踏み台に活用してほしいと語る。

(聞き手は高橋 信頼=ITpro


まつもと ゆきひろ氏

Rubyコミュニティーはどのように活動しているのですか。

 ソースコード変更の権限を持つコミッターは90人弱います。日本人は約半分で、他は海外にいる方です。ただし、Ruby本体を開発している人の他にも、ライブラリを開発している人や、さまざまなOSへの移植や検証を担当している人、ドキュメントを整備してくれている人もいます。その中で、本当にコアの部分を開発しているのは5~6人。それは全員日本人です。

 Rubyには毎日10~20件のコミット(変更)があります。全部は見切れないですね(笑)。最近は自分自身でRubyを直すことはほとんどなくなりました。自分が知らないうちに良くなっている感じです(笑)。今の私の役割は、Rubyにどういう機能を入れるのか決めることと、コミッターを任命することです。

 2013年2月に、Rubyの20周年を記念してRuby 2.0をリリースする予定なのですが、新機能として200近い提案がありました。どれを採用するか選ぶのが大変で、コア開発者が集まり半日缶詰になって決めました。

 組み込み向けの「mruby」(関連記事:まつもと氏が語るRuby新ステージ - mruby誕生の経緯を明かそう)の場合、コアは私1人で開発しましたが、周辺のツールは福岡CSKや九州工業大学の人たちが開発しました。GitHubで公開しているので、送ってもらった修正は私がボタンを押すだけで取り込めます。コミッターという概念がなく、“誰もがコミッタ”とも言えます。2012年の4月に公開したばかりですが、すでに20人以上は修正を送ってくれています。組み込み畑の人が使ってみて、「使えない。おまえ組み込みの経験ないだろ」と修正してくれたりしている感じですね(笑)。