今回は少し趣向を変えて、今後、PMOが向かうであろう未来像について考えてみます。プロジェクトマネジメントの在り方を問い直す良い機会になるのではないか。

後藤 年成
マネジメントソリューションズ 取締役 PMP


 この連載で何度か述べてきたことですが、連載が始まった2007年から現在に至るまで、「PMOはこうあるべきだ」という固定された役割は定義されていません。PMOは文字通りプロジェクトをマネジメントするための組織として、様々な国籍や業種・業態、企業文化に対応して、プロジェクトを成功させるという観点から「足りないものを補っていく柔軟な組織体」です。しかし、欧米におけるPMOの現状を見てみると、PMOという組織の動向やお客さまのニーズからPMOの未来の姿が浮かび上がってきます。

未来に向かうための5つのキーワード

 PMOが今後向かうだろうと考える道は、下記の5つのキーワードで表すことができます。
(1)グローバル
(2)アジャイル
(3)ビジネスサイド(BA:BABOK)
(4)チェンジマネジメント
(5)アウトソーシング

 これらのキーワードごとに、PMOとプロジェクトマネジメントの今後の進化について考えていきます。

(1)PMOのグローバル化は既に始まっている

 最初のキーワードは、言うまでもなく「グローバルPMO」としての進化です。各企業がグローバル化していく中で、当然ながらPMOもグローバル化が必要になります。実際に各国で動いているプロジェクトをグローバルにマネジメントし、統括していくというニーズは昨今急激に増えています。詳細については、第96回第97回のコラムを参照してください。

(2)アジャイル開発に求められるプロジェクトマネジメント

 次にアジャイル開発における、プロジェクトマネジメントです。アジャイル開発では、管理し過ぎず、アジャイル開発の特徴である「柔軟性」「スピード」を阻害しないようにすること重要です。管理すべきプロセスの要点を押さえ、最低限のコントロールでプロジェクトを進めるべきでしょう。また、いくつかのアジャイルプロジェクトを統括してマネジメントをしていく「アジャイル・プログラムマネジメント」のニーズも今後は増えてくると考えています。

(3)ビジネスサイドにも入り込むPMO

 これまで、PMOの役割というとプロジェクト管理プロセスの構築やプロジェクトの効率的な運営が中心となってきましたが、近年は業務にもっと入り込んで、ビジネスアナリシスにも踏み込んだPMOが期待されています。まさに、業務側のことも十分理解し、プロジェクトマネジメントもできるというスーパーマン/スーパーウーマンです。

 ただし、業務知識は一長一短に身に付くものではありません。そこで、BABOKのようなビジネスアナリシスの知識体系を用いながら、ビジネス側にも入って行けるようなマネジメント人材のニーズが高まってきています。詳細は姉妹コラムの「BABOKをプロジェクトに生かす」を読んでみてください。