プロジェクトマネジメントがうまくいっている現場というのは、必ずそこに「統一された強い“意志”」がある。その“意志”がプロジェクトメンバー全員に伝わっているプロジェクトでは、問題が発生してもうまく処理できる。長年、その“意志”とは何かについて考えてきた。今回はそれについて述べていきたい。反対意見もあるだろうが、それも含めて皆さんのプロジェクトを見直すきっかけになればと思う。

後藤 年成
マネジメントソリューションズ 取締役 PMP


 現在、多くのプロジェクトで、程度の差はあれ進捗管理や課題管理を行っているはずです。大規模なプロジェクトであれば、社内標準のプロジェクト管理プロセスやPMBOKなど、管理標準を利用してプロジェクト管理を実施しようと考えるでしょう。

 ただし、社内にある標準やベストプラクティスをうまく利用し、どんなに素晴らしいプロジェクトマネジメント・システムを構築したとしても、経験上、そこに“意志”がなければプロジェクトの失敗確率は高くなります。“意志”があっても、それがメンバーに浸透していないなら、やはり失敗する確率が高くなります。つまり、プロジェクトの成功には、「意志統一」が不可欠なのです。

 ここで言う「プロジェクトマネジメントにおける“意志”」について説明しましょう。私が考える“意志”の統一とは、以下の4つの“意志”をメンバー間で腹落ちさせ、共有化することです()。

(1)プロジェクトの目的
(2)QCD(品質、コスト、納期)の優先順位
(3)重要なリスク
(4)制約条件

図●プロジェクトマネジメントが機能するにはプロジェクトの意志が重要
図●プロジェクトマネジメントが機能するにはプロジェクトの意志が重要
[画像のクリックで拡大表示]

ベストプラクティスだけではうまくいかない

 皆さんも経験があると思いますが、PMBOKのようなプロジェクトマネジメントのベストプラクティスをそのままプロジェクトに適用しても、プロジェクトがうまくいくとは限りません。

 例えばPMBOKは、9つのエリアのプロジェクト管理プロセスの集合体です。各プロジェクト管理プロセスはプロジェクトマネジメントの構成要素であり、それぞれがお互いに、方針や手順、ルール、仕組みといった形で結び付けられます。もちろん、各マネジメントプロセスを完全に結びつけることはできません。そこにPMOなどが介在することによって、プロセス間の断絶が発生しないようにすることが大切だと前回のコラムでも述べました。

 しかし、いくら完璧な断絶のないプロジェクト管理プロセスを作ったとしても、そこには、前述した”意志”を入れていかなければならないと考えています。