これまで4回の連載で、あなたが個人で実践できる内容を取り上げてきました。今回からはより大きな効果を狙うため、テーマを広げていきます。広げる視点は2つ考えられます。1つは空間軸、つまり部下や同僚などあなた以外の人を巻き込む視点です。もう1つは時間軸で、現在に加えて将来にわたり効果の継続を狙う視点です。

 今回は前者の空間軸を取り上げます。あなたが身につけた改善ノウハウを周りにも広めていけば、成果は個人での活動の何倍にも大きくなると期待できます。ただし組織で改善活動に臨む際には、改善への意欲が元々高いあなたが個人で取り組むときとは勝手が違う面があります。

 例えば、成果に対する姿勢。あなたが実践するときと同じように、初めから高い成果目標を決めて、それを後輩や部下に課そうとしていませんか? こうした注意点を詳しく見る前に、恒例のチェックシートをやってみてください()。

図●チェックシート(該当する□にチェック)
図●チェックシート(該当する□にチェック)

 チェックした数が3つ以上あったあなたは、要注意です。本稿を参考にしながら見直しを図りましょう。

改善が続くかどうかは上司・先輩のサポート次第

 改善活動で成果を上げるには、活動に直接携わる社員の意欲の高さが重要です。あなたが周囲を巻き込むときには、周囲の意欲をいかに高めるかに気を配りましょう。

 では、改善に直接携わる社員が意欲的であれば安心してよいのでしょうか?――答えは「いいえ」です。当社が支援した顧客企業では、活動期間が長くなるにつれて管理者側の未熟なサポート体制が問題化するケースが多く発生します。いかに現場の社員が奮闘しても、その奮闘ぶりを上司が適切に評価しないなど、後ろで支える体制が不十分な場合、改善活動が息切れしてしまうのです。成果を上げ続けられるかどうかは、上司がいかに充実したサポート体制を構築できるかにかかっていると言っても過言ではありません。

 そこで以下では、(1)改善活動の当事者となる部下や後輩のモチベーションをいかに高めるか、(2)上司・先輩として、あなたはどのようにサポートするべきか、という2点について、当社での実例を交えつつ順に解説していきます。ポイントはそれぞれ大きく3つ挙げられます。

(1)部下や後輩のモチベーションを高めるための3カ条

 部下や後輩が活動に対して当事者意識を持ち、成果を上げたときに達成感を得られる仕掛けを取り入れましょう。

【ポイント1】目標設定から部下や後輩に参加してもらおう

 改善活動の初期段階、例えば職場の現状把握や目標設定から、部下や後輩に参加してもらうようにしましょう。「自分が作った目標だから、絶対に達成したい」――部下や後輩にこう感じてもらうことが狙いです。現状把握の際には、本連載の「チェックシート」をツールとして活用するのもおすすめです。

【ポイント2】部下や後輩の悩みを解決する目標にしよう

 ある顧客企業では、経営者は増大する労務費に頭を悩ませていた一方、現場の社員は残業の多さに不満を抱いていました。このような場合、経営者としては労務費の抑制を目標に掲げたいところです。しかし「残業して頑張っているのに、経営側は自分たちの賃金を下げようとしているのか」などと、現場の反発を招きかねません。

 上記のようなケースであれば、経営と現場が目指すゴールは実は同じです。無駄な残業が減れば、労務費の抑制にもつながるからです。そこでこの企業は、現場の悩みを解決する「残業のない職場」を前面に打ち出して、目標やテーマを設定しました。「成果を上げれば残業がなくなる」という現場にとってメリットを感じられる目標を立てたことで、多くの社員が改善活動に前向きに臨めるようになりました。