今回はいよいよ業務の改善に取り組みますが、前回の内容をおさらいしておきましょう。前回はあなたの役割を基準にして仕事を整理し、必要な(=役割に貢献する)業務だけに絞り込みました。それから必要な業務を「定常業務」と「非定常業務」に分類しました。

 実はこの分類に重要な意味があります。定常業務と非定常業務では、改善の進め方に違いが出てくるのです。それぞれの業務について改善方法を詳しく見る前に、チェックシートをご覧ください()。

図●チェックシート(該当する□にチェック)
図●チェックシート(該当する□にチェック)

 幾つチェックしましたか。3つ以上当てはまる方は、時間の使い方と働き方を関連づけられていません。それでは定常業務と非定常業務それぞれについて、改善の勘所をお伝えしましょう。

定常業務はレベルを決め、非定常業務は目的をはっきりさせておく

 まず定常業務では基準となる業務レベルを決め、それを維持することが重要です。一定の業務レベルに到達できる最短の時間や最善の手順を考えます。つまり「標準を作る」わけです。

 一方、非定常業務は基準となる業務レベルを決めにくく、標準は作りにくいものです。しかし業務に取り組む目的は明確であるという特徴があります。そこで業務の目的に貢献できる部分が最大になる状態を目指しましょう。当社ではこれを「濃度を高める」と表現しています。

 ところで定常業務で重要な標準については、誤解がつきものです。少し回り道になりますが、本連載における標準の意味を確認しておきましょう。

「標準=マニュアル人間の素」ではありません

 「標準は、業務を硬直化させる悪いもの」―――“マニュアル人間”という言葉を連想し、こう思われた方がいらっしゃるのではないでしょうか。まずは、この考えを捨てましょう。本連載における標準とは、「作成した時点での最善の手法」のことなのです。

 この標準は作成時点の最善ですから、一度作って終わりではありません。時が経過するにつれて見直しを図るべきで、見直しを重ねることで効果を高められます。このように、標準は決して硬直化させるものではないことがお分かりいただけるでしょう。

 標準を作ることの代表的な効果としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 教育がしやすいため、業務品質の悪化を防げます:
     担当者のスキルに関係なく、業務レベルを維持できます。ちょうど新入社員の実地教育が本格化している頃ですよね。標準を用意しておくことで、彼らに対して効率的に教育ができます。教える側のレベルに依存しにくくなります。
  • 計画を立てやすくなります:
     業務ごとの目安時間が分かることで、計画を立てやすくなります。当社が指導した大手保険会社の事務センターでは、1日が終わるまで終業時間すら分からないという問題がありました。そこで、業務のムダをそぎ落とした上で、目安となる業務時間を設定。1日の終業時間がわかるようになり、必要に応じて部署を超えた応援体制も組めるようになりました。
  • 部下に仕事を任せやすくなります:
     業務の手順を明確にしておくことで、部下に仕事を引き継ぎがやすくなります。その結果、あなたは本来の役割に貢献する業務により多くの時間を当てられ、組織全体の付加価値を最大化できるわけです。

 標準の意味を確認できました。さあ、いよいよ具体的な改善の手順です。定常業務、非定常業務の順に見ていきましょう。