前回では、改善が求められる背景と、改善の前提となる問題を発見するための5つの視点についてご紹介しました。今回は、「ステップ1:個人の仕事で高い付加価値を上げる」の1回目で、いよいよ実際の改善を実施していきます。

 それでは前回同様、以下についてご自身でチェックしてみてください()。

図●チェックシート2(該当する□にチェック)
図●チェックシート2(該当する□にチェック)

 今回のテーマは目に見える物の整理・整頓です。「整理・整頓なんて、子どもの頃に両親や先生に教わったから大丈夫」と思われた方。今あなたの机の上は、使いやすい状態になっていますか。あるいは、お子さんや部下の方々に整理・整頓の意義を説明できますか。「散らかっているものを並べ直すこと」と説明された方がいらっしゃるかもしれません。オフィス現場の改善がテーマである本稿では、その回答は不正解です。

 また、「整理・整頓の意義は理解しているし、手法もだいたい知っている」というあなた。実際に行動に移していらっしゃいますか。もし実践していなければ、みすみす果実を逃しているその状態こそがまさに問題です。以下では、最初に整理・整頓の意義をしっかりご理解いただいたうえで、具体的な手順を説明します。

整理・整頓は短期的・長期的成果を生む

 本稿で説明する整理・整頓は、それぞれ下記のような意味を持ちます。

●整理:捨てる技術
必要なものと不要なものを区別し、不要なものを処分すること

●整頓:明示する技術
整理で残った必要なものを、「どこに」「いくつ」「どのように」置くか決め、明示すること

 このように整理・整頓は、物を並べて置くだけの「整列」とは違います。

 整理・整頓をすることの意義は大きく2つあります。第1に、実践すること自体がすぐに業務効率の向上につながります。私が指導した顧客企業の製造現場では、完成品を除く備品・部材などについて平均で約3割の在庫を削減できました。不要物がなくなることで、不要物を運搬・保管・管理するコストなどを削減できます。さらに作業者自身の意識が向上するという目に見えない効果も得られました。あなたのオフィスでもムダなものがなくなることは、業務を効率よく進めるうえで大きな追い風となります。

 第2に長期的な成果の糸口になります。詳しくは後述しますが、整理をすれば「仕事に必要なものしか職場にない」状態に、整頓をすれば「必要なものが使いやすい置き場・置き方で、誰にでも分かる状態で明示されている」状態になります。この状態になれば、問題、つまり改善の糸口が見えてくるのです。この問題には様々なものがありますが、前回の連載で紹介した「5つのムダ」もその1つです。

 加えて、製造現場ほど整理・整頓が浸透していないオフィスで実践して成果をあげることは、あなたが周囲から一歩先んじるきっかけにもなります。それでは実際の手順を整理、整頓の順に見ていきましょう。