ソリューション企業への変貌を指向し、2010年から企業買収を加速させてきた米デル。前向きな表現を用いれば、ハードからソフト、サービスまで「バランスよく」手に入れ、ハード偏重だったかつての事業ポートフォリオを着実に拡充してきた(関連記事:デルはソリューションプロバイダーに変身する 米デル プレジデント兼CCO スティーブ・フェリス氏 デル 代表取締役社長 郡信一郎氏)。反対に敢えて厳しく言えば、総花的な買収で、ソリューション企業として目指す具体的かつ明確な道筋が見えにくくなっている印象もある。

 デルはどこへ向かっているのか。転身を図るデルから、ユーザー企業は何を得られるのか。2012年12月12日からの2日間、同社が本拠地のテキサス州オースティンで開催した年次イベント「Dell World 2012」で、一定の答えが見えてきた。

導入と運用の手軽さ押し出し、統合型システム基盤製品を展開

 「ソリューションのポートフォリオを整えるのに、最近1年間だけで50億ドル(約4200億円)を投じた」。Dell Worldの基調講演に立ったマイケル・デル会長兼CEO(最高経営責任者)は、積極的な企業買収を通じて事業変革に取り組んできたことを強調した(写真1)。さらに、「これまで多くの時間をかけて顧客企業のCEOやCIOと会い、彼らが何を求めているかを話し合ってきた」と語り、同社が推し進めてきた買収戦略が単なる顧客獲得やシェア獲得のためではないことを暗に訴えた。

写真1●マイケル・デル会長兼CEO(最高経営責任者)は、ソリューションのポートフォリオの整備に投じた費用を明かしながらデルの変革を強調した
写真1●マイケル・デル会長兼CEO(最高経営責任者)は、ソリューションのポートフォリオの整備に投じた費用を明かしながらデルの変革を強調した
[画像のクリックで拡大表示]

 Dell Worldの会期中、デルは買収の成果とソリューション企業としての針路を明示すべく、新たな製品とサービスの展開シナリオを次々と公表した。目玉の一つは、既報(米デルが垂直統合型アプライアンスを2月にも日本で発売、Dell Worldで発表)の通り、垂直統合型アプライアンス製品ファミリー「Active Infrastructure family」のグローバル展開である。2010年12月のコンペレント・テクノロジーズの買収により製品ラインナップに加えたストレージや、翌2011年8月に買収したフォーステン・ネットワークスのスイッチを、サーバーや管理ソフトと一緒にパッケージング。2013年2月以降ワールドワイドで順次提供を始める。

 デルは新規需要の獲得はもとより、ヒューレット・パッカード(HP)など垂直統合型アプライアンス製品で先行する競合からの乗り換え需要も喚起する(写真2)。その際、前面に押し出すのは導入や運用の手軽さ。例えば、HP製品で65ステップ、シスコシステムズ製品で39ステップかかる導入作業が、デルの管理ソフトを使えば16ステップで済むとしている。今後は、2012年11月に買収したゲイル・テクノロジーズの運用関連ソフトが持つ機能を管理ソフトに加え、仮想環境のプロビジョニングやワークロード管理の一層の効率化を図っていく。

写真2●デルは垂直統合型アプライアンス製品で後発だが、先行するヒューレット・パッカード製品やシスコシステムズが出資するVCE製品からのリプレースを喚起するなど巻き返しを図る考え
写真2●デルは垂直統合型アプライアンス製品で後発だが、先行するヒューレット・パッカード製品やシスコシステムズが出資するVCE製品からのリプレースを喚起するなど巻き返しを図る考え
[画像のクリックで拡大表示]