「商談の数や受注額で見ると、今年の4~6月期は過去5年で最高の結果だ。昨年比で2ケタ成長を遂げ、シェアは確実に向上している」。国内営業を統括する生貝健二副社長はこう語る。

 富士通の2012年4~6月期連結決算は減収となった。国内IT業界で存在感を取り戻すには、まず増収が至上命題となる。「もう一度増収増益路線に戻る」と生貝副社長が見せた自信。その背景にあるのは、山本正已社長が「攻めの構造改革」と題し、2012年4月に実施した大規模な組織改革だ。これが「種」となり、商談や受注という「芽」が出始めている。

社内の安全志向に“喝”

 富士通は8年ぶりに営業とSEの組織を分離し、各々の役割を明確化した。ソフト開発部隊やマーケティング部門の位置付けも再定義した(図1)。

図1●富士通が4月に実施した組織改革の概要図
SEと営業を分離し、SEを「システムインテグレーション」部門に集結させた。営業部隊は顧客ごとに再編成し、SEやソフト技術者、ハード開発部隊などと適宜チームを編成して売り上げ向上を狙う
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 2004年からSEと営業を同じ組織に所属させ、一体となって顧客のシステム構築を手掛けてきた。プロジェクトの遅延などによる採算の悪化を回避するのが主目的だが、最近は弊害が目立つようになってきた。不採算案件は減ったものの、営業は手堅いビジネスばかりを狙うようになり「攻めの意識が弱まった」(生貝副社長)のだ。

 そこで、流通や金融などの業種ごとに縦割りになっていた営業とSEの一体組織からSEを分離。SEを「システムインテグレーション」部門として再集結させた。

 営業は増収、SEは品質や原価管理にそれぞれ責任を持つよう、ミッションを明確化するのが狙いだ。システムインテグレーション部門を束ねる上嶋裕和執行役員常務は「このままではジリ貧になるという危機感があった。システムを作る人と商談を取る人と分けないと、リスクを取れず売り上げが増えない」と語る。

 新体制では、営業は従来同様にそれぞれの顧客を担当し、新規顧客の開拓に注力することになる。山本社長は「他社の市場を取りに行く」と宣言する。SEは業種をまたいでSI案件やシステム構築を手掛ける。日本のSEが国内の営業案件に縛られるのでなく、海外の案件も手掛けられるようにするのも狙いだ。