米国ラスベガスで開催されたWOMMAサミットでは、口コミマーケティングを実践している企業による、事例紹介を中心としたセッションも多く開催された。以下、そうしたセッションの中から、幾つか印象に残ったものをご紹介しよう。
社内コンサルタントが語った米IBMのソーシャル対応の内幕
まずは米IBMのセッション。登壇したトッド・ワトソン(Todd Watson)氏(写真1)は、「ソーシャルメディアコンサルタント」という肩書きを持っているが、彼がコンサルティングをする相手はIBMの社員である。
勤続21年のベテラン社員であるワトソン氏は、IBMがソーシャル時代に適合する組織体制を作り上げてきた歴史を語った。「IBM自身の変化がソーシャル対応を促す原動力となった」と振り返る。
1980年代、IBMのほとんどの社員は、毎日、オフィスに出勤して仕事をするのが普通だった。しかし、今日、IBMは、国連加盟国数をも上回る、200以上の国や地域に40万人以上の社員を抱え、その半数はオフィス以外の場所で仕事をしている。また、社員の7割は米国外におり、入社5年未満の社員も全体の半数を占めている。
ワトソン氏のミッションは、ソーシャルメディアを通じた社員による情報発信の在り方や、ソーシャルメディアのマーケティング活用について、全世界に散らばる、数多くの社員に正しく理解をさせることであった。
そこでまずIBMは2005年に「IBM Blogging Guidlines」を制定する。その基本理念とされたのが「By The People, For The People」という考え方だ。
IBMは、社員がブログなどネット上で、IBMの商品やサービスについてオープンに対話をすることは、自社の利益になると考えている。実際、2003年には、会社として、社員個人によるブログの利用を勧奨する声明さえ出している。
しかし、全世界に散らばる社員の発言を細かく縛ることは、困難かつ実効性に乏しいと考えた同社は、就業規則や守秘義務の順守を前提に、社員に対しては「責任ある大人としての発言」を求めるにとどめた。この考え方は、その後、Twitterなどブログ以外のソーシャルメディにも対象を広げた「Soicial Computing Guideline」に受け継がれている。
その後、ソーシャルメディアへのマーケティング活用が大きく進展する契機となったのは、2008年のリーマンショックであったという。