「つ部 × Multi-Screen UX Competition トークライブ」と題するイベントが2012年11月30日、名古屋で開催された。コンセント 代表取締役 長谷川敦士氏と、バイドゥ(百度) モバイルプロダクト事業部 マネージャーの矢野りん氏がUX(ユーザー体験)とUI(ユーザーインタフェース)をテーマに講演、会場からの質問にも答えた。

写真●コンセント 長谷川敦士氏(左)、バイドゥ 矢野りん氏(右)

 「Multi-Screen UX Competition 2013」はITproが主催する、マルチスクリーンを活用したアプリとアイデアのコンテスト。マルチスクリーンとは、スマートフォン、タブレット、PC、テレビといった様々なデバイスを指す。「つ部」は「名古屋つくる部」の略。名古屋のスマートフォンアプリ開発者を中心とするコミュニティだ。今回のイベントは「Multi-Screen UX Competition」と「つ部」のコラボにより開催された。司会はつ部の塚田翔也氏が担当した。

写真●つ部 × Multi-Screen UX Competition トークライブ
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写真●つ部の塚田翔也氏

「理解」をデザインする
コンセント 代表取締役 長谷川敦士氏

 長谷川氏は、日本におけるIA(インフォメーションアーキテクチャ)の第一人者として知られる。情報アーキテクチャアソシエーションジャパン(IAAJ)の主宰者で、『IA100 ユーザーエクスペリエンスデザインのための情報アーキテクチャ設計(BNN新社)』などの著書をNPO法人人間中心設計推進機構(HCD-Net)の理事でもある。東北大学で素粒子物理を学び、東京大学大学院で認知科学を修めたという、クリエイターとしては異色の経歴を持つ。

写真●コンセント 代表取締役 長谷川敦士氏

 コンセントは、Webサイトの設計から構築までをトータルに手がける企業。Webだけでなく「an an」などの雑誌のデザインも行なっている。「『伝わるしくみ』をデザインする企業」と長谷川氏はコンセントを規定する。「世の中で伝わらないものを我々が伝わるようにしてやるぜ、という会社」(長谷川氏)。長谷川氏は、その代表取締役であると同時に「インフォメーションアーキテクト」と自らを呼ぶ。インフォメーションアーキテクトとは何か。「『理解』をデザインする人」と長谷川氏は言う。

 IAは、Webサイトの構造や遷移の設計と思われることもある。しかしそれは狭義のIAであり、広義のIAは「『理解』のための総合プロデューサー」であると長谷川氏は言う。

写真●情報アーキテクチャとインフォメーションアーキテクト
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 Webサイトの階層や遷移を考えるだけでは、ユーザーの体験は見えてこない。多くの場合、ユーザーは単一のWebサイトだけでなく、複数のWebサイトを利用して行動する。しかも、PC、スマートフォン、携帯電話など、シーンに合わせてさまざまなスクリーンからアクセスする。このような「Webエコシステム」を想定しなければ、現実のユーザーの体験は設計できない。