アジャイル開発が盛んな米国に対して、日本では依然としてウォーターフォールモデルによる開発が大半だといわれている。実際に、日本はアジャイルの取り組みが米国のほか英国、ブラジルなどと比べても遅れを取っていることが調査結果からも明らかになった。

図1●各国のアジャイル開発の普及状況
図1●各国のアジャイル開発の普及状況
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 情報処理推進機構(IPA)が2012年6月に公開した「非ウォーターフォール型開発の普及要因と適用領域の拡大に関する調査」によると、米国や英国では非ウォーターフォール型開発の普及度が高く、逆に日本や中国では低い(図1)。ここで、非ウォーターフォール型開発とはアジャイル開発など、短いサイクルで反復的に開発を進める手法のことである。

 アジャイル開発の普及が進まないと、激しさを増す市場や社会環境の変化に日本のITが対応しにくくなる恐れがある。IPAの柏木雅之氏(技術本部 ソフトウェア・エンジニアリング・センター エンタプライズ系プロジェクト 研究員)は、「アジャイル型の開発が、市場をリードするソフトウエアの開発を強力に後押ししている面があると見ている」(柏木氏)という。

 実際、米国発のパッケージソフトやクラウドサービスは、アジャイル開発によって生み出される傾向が強まっている。例えば、開発ツールである米Microsoftの「Visual Studio」や米IBMの「Rational Team Concert」などのパッケージは、アジャイルで開発されている。また、米Salesforce.comはクラウド基盤上の各種サービスをアジャイルで開発している。市場をリードするソフトウエアの開発と、アジャイルという開発手法には何らかの関係性があるとする柏木氏の見方は、今後のシステム開発のあり方を考える上で大いに気にすべきだろう。

 なお、前述の調査結果ではブラジルにおける非ウォーターフォール型開発の普及の加速度(成長度)がめざましい。IPAの山下博之氏(技術本部 ソフトウェア・エンジニアリング・センター エンタプライズ系プロジェクト プロジェクトリーダー)は「ブラジルはアジャイル型開発が普及している米国と時差がほとんどないので、米国企業のオフショア先として急速にアジャイル型開発が浸透しつつある」と説明する。