「日本のITエンジニアは“がんじがらめ”になっている」。取材した複数の外国人エンジニアからの共通する指摘だ。彼らの目になぜそう映るのか。原因は、日本ならではのベンダーとユーザーの関係にあるようだ。

要件の決定権を持つ人が違う

 まずは、プロジェクトの体制面における指摘を紹介しよう。ベンダーがユーザー企業のシステム構築を請け負う際、日本ではシステム部門がベンダーと利用部門の間に入って、プロジェクトを主導したり、調整したりすることが多い。

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写真1●エイチシーエル・ジャパンのSreedhar Venkiteswaran氏。インド出身。インドや米国、ドイツでさまざまな業種のシステム開発経験を持つ

 米国やドイツ、インドでのシステム開発経験が豊富なエイチシーエル・ジャパンのSreedhar Venkiteswaran氏(デピュティジェネラルマネージャー 日本デリバリーヘッド。写真1)は、日本で一般的なそうした体制はインドや欧米とは明らかに違うという。「インドでも、米国やドイツでも、ウォーターフォールモデルを採用した構築プロジェクトでは、ベンダーとシステム部門が1対1の関係で進める。日本のように、プロジェクトに利用部門が入って、トライアングルの体制になるのは珍しい」。とりわけ、日本では機能や操作性など主要な要件に関する決定権を利用部門が握っている点に驚いたそうだ。

 インドや欧米では、利用部門の要望を踏まえつつも、CIOやシステム部門がトップダウンでシステム化の方針や仕様をすべて自身の判断で確定させる。そのやり方だと、開発が始まってから変更や追加の要望が続出することはないという。

 日本のITエンジニアにすれば、この捉え方には同意できないところがあるだろう。業務ニーズをシステムに正しく反映するには、利用部門の関与が極めて重要と考えられるからだ。ただし、日本ではパッケージ導入時にカスタマイズ範囲が極端に広がりやすいという、Venkiteswaran氏の次の指摘には耳を傾ける必要があるかもしれない。「日本の利用部門はトップダウンの指示を受けない限り、たとえパッケージが前提とする業務フローが合理的であったとしても、システムをカスタマイズして現行のやり方に合わせようとする」。