V-Low防災デジタル・コミュニティラジオ検討協議会は、「InterBEE 2012」(2012年11月14日~16日開催)において、「"一家に一台安心ラジオ"としての次世代ラジオ」と題し、セッションを開催した。このセッションには、逗子・葉山コミュニティ放送代表取締役社長/CSRA(Community Simul Radio Alliance)代表/V-Low防災デジタル・コミュニティラジオ検討協議会会長の木村太郎のほか、和歌山県田辺市のFM TANABE、兵庫県加古川市のBAN-BANネットワークス/近畿V-Low実証実験協議会加古川分科会事務局、愛知県豊橋市のエフエム豊橋/豊橋ケーブルネットワークらが議論に参加した。東日本大震災の教訓を受けて、今後想定される東南海地震など様々な災害に備えるというスタンスから、地域ラジオとしての役割とV-Low帯を使っての次世代ラジオについて議論した。後編では、東南海地震の直接の影響が大きいと想定される和歌山県田辺市と愛知県豊橋市のコミュニティFMの防災に対する取組とコミュニティラジオの役割について報告する。

 前編において、V-Lowデジタルコミュニティ・ラジオ検討協議会はJ-ALERTとの連携、近畿V-Low実証実験協議会は「安心・安全公共コモンズ」と連携した防災ラジオとしてのV-Lowの活用を語った。各々のV-Lowの実証実験の概要を聞いた和歌山県田辺市のFM TANABE代表取締役社長の泉清氏は、「地域的なこともあるが、人口カバー率が高くても市町村が山の向こう側にある場合、電波が届かない地域がある。これをV-Lowマルチメディア放送で補完できるのではないかと考えている。また、難視聴対策としては、ケーブルテレビの幹線を使っているが、これらも活用できればと思っている」とV-Lowマルチメディア放送への期待を語った。

防災にラジオの利用を促進

写真1●和歌山県田辺市のFM TANABE株式会社代表取締役社長の泉清氏
写真1●和歌山県田辺市のFM TANABE株式会社代表取締役社長の泉清氏

 和歌山県田辺市では、東日本弾震災を契機に、南海トラフによる東南海地震を想定したハザードマップの作り直しを行っているという。具体的には、津波の想定を6mから12m修正した。FM TANABEの泉清氏は防災行政無線について、「2011年9月の台風12号により史上最大の災害に見舞われたが、家の中では音が聞こえないために避難が遅れた。つまり、大雨の中で防災無線が役に立たなかった」と説明した。また、土砂崩れによる停電で2日間普及せず、テレビや携帯電話が使えなくなった地区が多くあったことから、「コミュニティFMは、地域メディアとしての役割が高くなってきており、ラジオは必要だという流れになってきている」と説明した。ただし、「防災無線の整備を始めたため、自治体としてラジオへシフトするという方向にはなっていない」とも付け加えた。

 同様に、東海地震の地震防災対策強化地域と東南海地震の防災対策推進地域になっている愛知県豊橋市でも、震度6強の地震予想から震度7へ、津波も7mから19mに、豊橋の南側に位置する渥美半島の田原市の津波予測を8mから22mに変更したという。そして、豊橋市では「東日本大震災の経験を受けて、過去の歴史はどうだったかとひも解き、津波の発生状況を調べた」とエフエム豊橋取締役/豊橋ケーブルネットワーク企画部長の柴田憲宣氏は語った。「市では標高看板を市内各所に設置し、津波が発生した場合に避難する避難ビルの指定を行った」と柴田憲宣氏は説明した。

写真2●エフエム豊橋取締役/豊橋ケーブルネットワーク企画部長の柴田憲宣氏
写真2●エフエム豊橋取締役/豊橋ケーブルネットワーク企画部長の柴田憲宣氏

 そして、避難するにも市民へ告知が必要なため豊橋市では、エフエム豊橋の電波を使ってラジオを自動起動させて、緊急情報を受信する豊橋防災ラジオの配布を今年10月に開始した。柴田憲宣氏は、「豊橋では、以前から防災行政無線があり、市内各所に設置されているが、調査の結果、約4割が聞こえないということがわかり、防災行政無線とは別に防災ラジオというのを始めた」と述べた。