順位が激変した今回の顧客満足度調査。富士通やNEC、日立製作所、日本IBMなどトップを獲得した企業の取り組みを見ると、大きく二つの活動が満足度向上につながったことが分かる。「顧客との距離を縮める」と「実践通じて未来を示す」である。

顧客との距離を縮める

 PCサーバー、メインフレームなどハードウエア6部門で1位を獲得した富士通。「この3~4年で、製品やサポートに関する多くの改善を積み重ねてきた。その成果が、今回の結果につながったのではないか」。CS経営推進室の仲田孝司室長はこう話す。

 サーバー用RAIDカードに搭載する内蔵電池の寿命を従来の2年からPCサーバーの耐用年数と同じ5年に延ばし、交換を不要にした。ノートPCのACアダプターを持ち運びしやすいように小型化した──。この1~2年で実施した改善策の例である。ほかにも、PCサーバーの電源ボタンを突起の無いものにする、パートナーにハード製品を納入する際に使う外箱を折りたためるようにする、といった改善を実施してきた。

開発・営業が一体で知恵を出す

 一連の改善活動を支えているのは「製販一体・お客様の声システム」である。製品分野ごとに顧客の声を収集し、開発部門や営業部門など全社で共有する仕組みだ(図1)。

図1●ユーザーの声を全社で共有し改善活動につなげた富士通
開発部門、営業部門、経営層がユーザーの声に改善案を出し、ユーザーにフィードバックしている
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 このシステムは顧客サポート窓口に寄せられた意見やクレーム情報を収集する。さらに、営業担当者やSEが顧客企業を訪問して気付いた不満点や直接聞いた声などを書き込んでいく。

 社員はこれらの情報をイントラネットで参照できる。それぞれの意見には「賛同」ボタンが付いており、読んだ人が意見に同意する場合はこのボタンを押す。「私も同じような意見を聞いた」などと書き込めるので、システム上で議論を広げていくこともできる。

 関係部門は同システムの情報や議論を基に、改善策を議論する。特に「賛同」が多く集まった項目には、製品担当の役員や事業部門長らが直ちに対応を指示する。製品やサービスを改善したら、その結果は意見を述べた顧客企業にフィードバックする。

 富士通が1位を獲得した6部門の結果を見ると、いずれも「問い合わせ対応」や「ハードの信頼性」で高評価を獲得している。製販一体・お客様の声システムを生かした取り組みにより、顧客の疑問やクレームに確実に対応し、顧客の声を基に改善した成果が表れているといえそうだ。

顧客の待ち時間を半減

 「問い合わせ対応の改善が、顧客満足度の向上につながったとみている」。こう語るのはNECの加藤雅之 第三ITソフトウェア事業部シニアマネージャー。実際、1位を獲得した「Webアプリケーションサーバー」では「問い合わせへの対応」への評価が平均を10ポイント上回った。PCサーバーやグループウエアソフトでも平均以上の評価を得ている。

 同社はミドルウエアやサーバーなどプラットフォーム製品の顧客サポート部門で、製品に関する知識や技術スキルを持つ人材を育成。その人材に、トラブル対応など1次サポート業務を任せるようにした(図2)。2011年に体制を整備し、2012年にはサポート業務を担当する要員数を増やした。

図2●サポートの回答時間を短縮したNECと日本IBM
顧客対応のセンターに問題解決で一定のスキルを持つスタッフを配置した
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 改善策を実施した結果、製品や問題を切り分けて専任担当者に引き継ぐ従来のやり方に比べ「問題解決に要する時間が半減した」と加藤シニアマネージャーは語る。

 新体制でも、1次サポート担当者による対処が難しい場合は製品部門などに引き継ぐ。この場合に、「時間を要する問題か」「いつまでに回答するか」といった事項を顧客企業に確実に伝える仕組みを作った。日本IBMも、サポート窓口に製品の知識やスキルを持つ人材を置く施策をUNIXサーバーなどで実践、成果を上げている。