著者はサムスン電子の人事チームで部長を務めた李炳夏氏。その李氏がサムスン電子の実際の人事データを基に、人事戦略が企業の競争力にどう結び付いているかを分析したのが本書だ。

 特徴的なのは「変わってないものにも注意すべき」と説いていること。サムスン電子はアジア通貨危機で、それまでの家族主義的な人事政策を成果主義に180度転換した。その一方で、今でも年功序列や家族主義の情緒が多く残っていると筆者は指摘する。その代表例が子どもの大学までの教育費支援だ。

 李氏の博士論文を再構成したものであるため、難解な箇所もあるが、サムスン電子の強さの裏側を知ることができる一冊だ。

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サムスンの戦略人事―知られざる競争力の真実
李 炳夏著
新宅 純二郎 監修
日本経済新聞出版社発行
2520円(税込)