2012年12月4日、衆議院議員総選挙が公示された。16日の投開票まで、師走の選挙戦が繰り広げられる。立候補者陣営自らがインターネットで「選挙運動」を行うことは今も規制されている(関連記事)ものの、2009年の前回総選挙の時と比べて、有権者の間でソーシャルメディアが格段に浸透した。ネットから得られる情報は増えている。
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公示前討論会で底力見せた「ニコニコ」
この数年、政治分野で独特の存在感を放っているのが、ドワンゴ・ニワンゴが運営するネット動画サービス「ニコニコ動画」「ニコニコ生放送」である。公示前の11月29日に開催した「ネット党首討論会」には、民主党の野田佳彦首相を含む10政党の代表がそろい踏みした(写真、関連記事)。サイトへの総来場者数は約140万人。既存マスメディアである新聞社や放送局などもこの討論会を取材して報道した。
討論会の直前には、民主党の幹部が野田首相の出席に難色を示す発言をしたのに対し、ニコニコが強く抗議するやり取りがあった。結局、野田首相は討論会に出席し、ニコニコも抗議を取り下げた。今や主要政党も、ニコニコとその背後にいる多数の有権者の目を無視できなくなった。
ニコニコは国政選挙のたびに大規模な“出口調査”を実施している。放送局などが投票所の出口に調査員を派遣して投票先を尋ねる出口調査のネット版だ。前回の2009年総選挙では約23万ユーザーが回答したものの、実際の選挙結果は調査結果とはかけ離れていた(関連記事)。さて、今回はどうなるか。
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- 政治家がニコニコ動画を使う理由
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廃案になったマイナンバーの行方は?
政府・地方自治体の情報政策担当者や、ITベンダーの政府・自治体システム関係者にとって関心が高いのは「マイナンバー制度(社会保障・税に関わる共通番号制度)」の行方ではないだろうか。ITproは11月14日未明に「マイナンバー制度の緊迫度」を訴えるコラムを掲載したが、まさにこの日の午後に、野田首相が国会の「党首討論」の場で衆議院解散を明言。2日後の16日に解散した。
解散による国会閉会で、2月に提出され審議中だった「マイナンバー法案」は、「地球温暖化対策基本法案」などとともに廃案となった。「決められない政治」を物語る1つの出来事だった。
現在行われている選挙戦において、社会保障改革や財政再建は大きな争点になっている。だが、それを動かすエンジンになり得るマイナンバー制度はあまり話題になっていないようだ。過去の総選挙では各党や候補が「IT戦略」「電子政府」に関する政策を競い合ったこともあったが、今では「票につながる」論点ではなくなってしまったのか。
いずれにせよ、選挙後に発足する新政権は、マイナンバー法案を国会に再提出するか、大幅に修正して提出するか、先送りするのか、判断することになる。
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