経済規模の割にデータセンター(DC)が少ない――。首都圏と比べてそう言われていた関西圏でも近年、大型DCの開業が相次いでいる。延べ床面積で1万平方メートルを超えるDCが相次ぎ開業し、開業から2年ほどで予約が埋まるという状況で推移している。関西圏のDC事情を、現地取材を基に解説する。

 大阪でDCといえば長らく、「堂島」が代名詞だった。大阪市中心部にある堂島地区には、NTTグループのDCが集積しているからだ。中でも最大規模なのが、NTTデータの「堂島DC」。高層ビルが丸ごと1棟データセンターで、延べ床面積は12万平方メートル。東京都江東区にある同14万平方メートルの「アット東京DC」に次ぐ、日本最大級のDCだった。

 現在、大阪における、DCの「堂島一極体制」が変わりつつある。2012年には、DC用ビルを大阪市内で数多く手がける京阪神ビルディングが、同1万8061平方メートルの「西心斎橋DC」を開業した。

写真●関電システムソリューションズの第3データセンター
写真●関電システムソリューションズの第3データセンター
[画像のクリックで拡大表示]

 2011年には、関西電力の子会社である関電システムソリューションズが、サーバールーム面積が4100平方メートルある「第3DC」を開業(写真)。2010年にはNTT西日本がサーバールーム面積が3800平方メートルの「高津DC」を開業している。これら二つのDCは延べ床面積を公開していないが、延べ床面積は一般にサーバールーム面積の2倍以上になるため、延べ床面積の規模では、1万平方メートルを超えると見られる。

 つまりこの3年の間に、2010年のNTT西日本・高津DC、2011年の関電システムソリューションズ・第3DC、2012年の京阪神ビルディング・西心斎橋DCといった具合に、毎年1万平方メートルを超えるDCが、大阪市内に新設されたことになる。2011年3月の東日本大震災以降、DC需要が急増したこともあり、NTT西日本・高津DCは予約ベースでほぼ満床、関電システムソリューションズ・第3DCは、予約ベースで7割近くが埋まったという。

まずはシステムインテグレーターが“予約”

 なお、この「予約ベースで満床」は、サーバールームに実際にサーバーが収納されたことを意味しない。NTT西日本、関電システムソリューションズ、京阪神ビルディングの3社とも、DCのスペースを他のシステムインテグレーターなどに貸し出しているからだ。

 システムインテグレーターは、フロア単位やケージ(サーバールーム内に設けた囲い)単位でDCスペースを借り、そのスペースを「自社DC」と銘打って、ユーザー企業にまた貸ししている。京阪神ビルディングは、直接ユーザー企業にDCを貸し出すのではなく、システムインテグレーターなどの事業者にのみDCのスペースを貸し出すという、DCの「ホールセラー(卸売業者)」である。

 システムインテグレーターは、将来の需要も見込んで、それなりに大きなスペースをDC事業者に対して予約する傾向がある。NTT西日本・高津DCや、関電システムソリューションズ・第3DCが「予約ベースで満床」が近づいているというのは、システムインテグレーターが予約できるスペースが無くなりつつあるということを意味するわけだ。

 もちろん、システムインテグレーターによるDCスペースの予約の背景には、ユーザー企業によるDC需要の高まりが存在する。大阪におけるDC需要が拡大基調にあるのは間違いない。そこで関電システムソリューションズは現在、第3DCに続く新しいDCの建設を検討している。

日立は岡山に新棟を建設

 関西圏全体を見渡すと、大阪以外の地域でもDCの新設は盛んだ。日立製作所は2012年10月、岡山県内に延べ床面積が6500メートルの「岡山第3センタ」を開業した。第3という言葉が示すように、このDCがある敷地には、「第1」「第2」という2棟のDCが既に開業している。第1、第2とも、第3とほぼ同じ延べ床面積があるが、2012年に開業した第3は電力供給量が多く、さらに電力消費効率も高いため、第1・第2と比べて2倍以上のサーバーを稼働できる見込みである。

 富士通は2013年に、兵庫県明石市に新しいDC棟を開設する予定だ。1997年に開業した富士通の「明石システムセンター」は、同社が群馬県館林市で運用する「館林システムセンター」と並ぶ、富士通の基幹DCである。