エンタープライズICTのNo.1情報誌「日経コンピュータ」とNo.1情報サイト「ITpro」がタッグを組んだ大型企画「日経コンピュータ ×ITpro 連動特集」。その第1弾「世界最適のシステム“立地”戦略」では、日経コンピュータ誌面で掲載した内容に続き、「マレーシア編」「中国・香港編」を公開しました。今週は災害対策として注目を集める「国内地方都市」編をお届けします。

 ユーザー企業がITのBCP(事業継続計画)を強化する上では、業務システムのバックアップを、本社から離れた地方で運用するのが効果的だ。異なる場所にあるデータセンター(DC)を、あたかも一つのDCであるかのように利用可能にする「広域連携サービス」を利用すれば、ユーザー企業は運用負荷を上げずに、DR(災害復旧)対策を強化できる。

 DCの広域連携サービスの一つが、インテックが2012年6月に開始した「EINS WAVE 仮想データセンター」サービスだ。インテックが全国3地域で運用するDCを、仮想的なLANで接続するというものだ。ユーザー企業は3地域に設置するサーバーを、一つの仮想的なLAN(セグメント)の中で運用できる。

 このようなサービスは、仮想マシン技術をDR対策に活用するユーザーにとって、非常に有用だ。シナリオはこうだ。ユーザー企業は、仮想マシンの「仮想ディスク」のデータを、離れた場所にあるDCにコピーしておく。何かシステムに障害が発生した場合は、そのバックアップデータを使って、離れた場所のDCで仮想マシンを起動し直す。そうすることで、ユーザー企業は元のシステムを離れた場所にあるDCで、すぐに復元できるようになる。

「一つのLAN」だからこそ実現できる即時性

 実は、このようなシナリオを実現するのは、そう簡単なことではない。なぜなら異なる地域のDCで運用するサーバーは、通常はDCごとに異なるLANに所属しているからだ。LANが異なれば、IPアドレス体系なども異なる。バックアップデータから起動した仮想マシンは、元のDCで運用していたIPアドレスのまま起動してしまうので、IPアドレスなどを変更する必要があった。インテックが提供するサービスを使って、異なる場所にあるDCを一つの仮想LANで結んでおけば、仮想マシンのIPアドレス変更作業などが不要になる。

写真●インテックが富山市で運用するデータセンター
写真●インテックが富山市で運用するデータセンター
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 インテックは首都圏(東京都)、北陸(富山県)、関西(大阪府)の3カ所で、各地の電力会社と提携してDCを運用している(写真)。インテックはこの3カ所のDCを、Gビット/秒クラスの専用回線で接続。さらに各DCに、ブロケード コミュニケーションズ システムズ製の「Brocade MLXeシリーズ コア・ルータ」と「Brocade NetIron CER 2000シリーズ エッジ・ルータ」を配置することで、3地域のDCにまたがった仮想LANを構築した。インテック ネットワーク&アウトソーシング事業本部の小川圭一氏は、「東京から見て、富山のデータセンターにあるサーバーが『同じビルの上の階にある』ぐらいの感覚で利用できる」と説明する。