by Gartner
ジョン・マホーニー VP兼最上級アナリスト
山野井 聡 リサーチ部門 日本統括 VP

 技術革新でITの姿が絶え間なく変化する中、次世代のCIO(最高情報責任者)が台頭しつつある。企業内の情報システムを大過なく開発、運用するだけではなく、最新のテクノロジーを駆使して事業の戦略的価値を高めるCIOである。

 次世代のCIOは、これまでもいくつかの企業で活躍していたが、まだ少数派だった。だが今後5年以内には、次世代のCIOこそが主流派となり、過半を占めるようになるだろう。

 次世代のCIOが、企業の中で果たすべき役割は何か。ガートナーは、企業における将来のIT部門の姿について、四つのシナリオを提示したい。企業のIT部門がどのシナリオをたどるかによって、CIOに求められる役割がおのずと変わるだろう。

(1)グローバル・サービス・プロバイダーとしてのIT部門
 IT部門は、グループ企業に散在していた組織を統合したシェアードサービス部門として、社内外にITサービスを提供するようになるだろう。IT部門は一つの事業体として機能を集約し、市場原理を取り入れ、特定の事業領域に集中して投資を行い、競争力のあるサービスを提供する。このシナリオでCIOに求められる役割は、Integrator(統合者)とOptimizer(最適化者)である。

(2)機関室(エンジンルーム)としてのIT部門
 IT部門は素早く、適正なコストでITインフラを調達する存在となるだろう。IT部門は技術や市場の変化を常にウォッチすることで、IT資産の最適化、アウトソーシング、ITベンダー管理、IT財務管理といった専門的なノウハウを蓄え、企業の中で一定の地位を築く。このシナリオでのCIOの役割はBroker(仲介者)、Engineer(設計開発者)である。

(3)ビジネスとしてのIT部門
 情報こそが企業のプロダクトそのものであるか、少なくともプロダクトと不可分のものである。ビジネスは、情報の流れの中に構築される。IT部門は、このような情報のバリューチェーンの中で、ビジネスに革新を起こす存在になるだろう。ここでのCIOの役割はExplorer(探索者)、Pioneer(開拓者)である。

(4)全社を変えるIT部門
 ビジネスリーダーが情報や技術を積極果敢に使いこなし、伝統的なビジネスの枠を打ち破り、野心的な協業プロジェクトを推し進める。焦点となるのは技術というより、情報そのものだ。成熟した事業も、こうした異なるモデルを取り入れることで、さらに成長が見込める。

 伝統を重んじる人はこうした手法を無節操だと感じる一方、他の人は独創性があるとみるだろう。このモデルは非伝統的なビジネス、例えば変化の激しいビジネスやベンチャー企業などで力を発揮する。このシナリオでのCIOの役割はEnabler(実現推進者)、Conductor(指揮者)である。

 次世代のCIOは、将来のIT部門の姿を自ら決めるという、重要な役割を負うことになる。そして次に、そのIT部門の中で自らが果たすべき役割を知り、それをCIOの個人的なロードマップに落とす必要がある。